ことなかれ主義令嬢は、男色家と噂される冷徹王子の溺愛に気付かない。
第十七章「でろでろに甘い、元暴君」
それから数日後、僻地へ視察に行っていたルシフォールが帰ってくるとあって、リリーシュはルルエやメイドに頼んでめいいっぱい可愛くしてもらった。特に一目見て気に入った緩やかなラインのアイスブルーのドレスは、きっとルシフォールも褒めてくれる事だろう。
(会えない事がこんなに辛いとは思わなかったわ)
急遽決まった視察だったらしく、見送りの挨拶も出来ないままルシフォールは行ってしまった。居ないと分かっていながらも、リリーシュは彼の部屋に続く扉が気になって仕方がなかった。
「ルシフォール様!」
リリーシュは待ちきれず、初めて城門の前まで迎え出た。同行していた貴族や士官達が目をまん丸にして驚いていたが、彼女にはルシフォール以外目に入らない。
「リリーシュ?なぜここに…」
彼女の姿を目にしたルシフォールが、慌てて馬から下乗する。まさかここで会えるとは思っておらず、喜びよりも先に動揺が前に出た。
彼はリリーシュ以上に帰城が待ち遠しくて仕方がなかった。そもそも視察で歓迎された事などないルシフォールだが、今回は気もそぞろだった為あまり怖がられる事もなく済んだように思う。
こんなにも誰かに会いたいと焦がれたのは、生まれて初めてだった。リリーシュのふんわりとした笑顔を浮かべるだけで、愛しさに胸が締めつけられた。
何が何でも夕食時には間に合わせようと、ルシフォールはいつもの何倍も気合を入れ馬を走らせたのだが、まさかこんなにも早く会えるとは。
ここまで来てくれたという事は、彼女も自分に会いたがっていたという事だろうか。もしもそうならば、嬉しくて嬉しくてもう一度馬で駆け出してしまいそうだと、ルシフォールは思った。
「驚かせてしまい申し訳ございません。本日帰城されると聞いて、いてもたっても居られなくて…」
たたっとこちらに駆けてきたリリーシュは、寒さのせいか頬を真っ赤に蒸気させていた。喋るたびに、白い息がふわふわと彼女を囲んでいる。
「わざわざこんな所まで出迎えに来てくれたのか」
「ご迷惑でしたでしょうか」
「いや」
ルシフォールは柔らかな表情をしてみせると、ふわりと彼女を抱き上げた。
「えっ、あっ、あのっ」
「自分でも驚く程嬉しい」
男性から姫抱きなどされた事のないリリーシュの顔は、瞬時に真っ赤に染まる。ルシフォールは涼しい顔をしているが、その耳は彼女と同じ赤色だった。
「ありがとう、リリーシュ」
(ルシフォール様、笑ってるわ)
それだけで生きていて良かったと思える程、リリーシュはルシフォールを深く愛しはじめていた。大勢の人がいる前でこんな事、本当はするべきではないのに。
ルシフォールが喜んでくれたから、他の事はもうどうでもよくなってしまった。
「馬に乗るか?手綱は俺が持つから」
「良いのですか?ぜひ乗りたいです」
「俺の首に手を回して」
「は、はい」
ルシフォールの首にそっと腕を回すと、息がかかりそうな程距離が近付く。痛いくらいに心臓が高鳴るリリーシュと、彼女の甘い匂いに酔ってしまいそうなルシフォール。彼はリリーシュを落としてしまわない様、そのままゆっくりと馬に乗せた。
「ルシフォール様、ありがとうございます」
「あぁ」
(本当に誰よりも素敵だわ)
(こんなに可愛くてどうするんだ)
周囲はただただ、ルシフォールの行動と表情に目が飛び出しそうな程に驚くばかりだった。
(会えない事がこんなに辛いとは思わなかったわ)
急遽決まった視察だったらしく、見送りの挨拶も出来ないままルシフォールは行ってしまった。居ないと分かっていながらも、リリーシュは彼の部屋に続く扉が気になって仕方がなかった。
「ルシフォール様!」
リリーシュは待ちきれず、初めて城門の前まで迎え出た。同行していた貴族や士官達が目をまん丸にして驚いていたが、彼女にはルシフォール以外目に入らない。
「リリーシュ?なぜここに…」
彼女の姿を目にしたルシフォールが、慌てて馬から下乗する。まさかここで会えるとは思っておらず、喜びよりも先に動揺が前に出た。
彼はリリーシュ以上に帰城が待ち遠しくて仕方がなかった。そもそも視察で歓迎された事などないルシフォールだが、今回は気もそぞろだった為あまり怖がられる事もなく済んだように思う。
こんなにも誰かに会いたいと焦がれたのは、生まれて初めてだった。リリーシュのふんわりとした笑顔を浮かべるだけで、愛しさに胸が締めつけられた。
何が何でも夕食時には間に合わせようと、ルシフォールはいつもの何倍も気合を入れ馬を走らせたのだが、まさかこんなにも早く会えるとは。
ここまで来てくれたという事は、彼女も自分に会いたがっていたという事だろうか。もしもそうならば、嬉しくて嬉しくてもう一度馬で駆け出してしまいそうだと、ルシフォールは思った。
「驚かせてしまい申し訳ございません。本日帰城されると聞いて、いてもたっても居られなくて…」
たたっとこちらに駆けてきたリリーシュは、寒さのせいか頬を真っ赤に蒸気させていた。喋るたびに、白い息がふわふわと彼女を囲んでいる。
「わざわざこんな所まで出迎えに来てくれたのか」
「ご迷惑でしたでしょうか」
「いや」
ルシフォールは柔らかな表情をしてみせると、ふわりと彼女を抱き上げた。
「えっ、あっ、あのっ」
「自分でも驚く程嬉しい」
男性から姫抱きなどされた事のないリリーシュの顔は、瞬時に真っ赤に染まる。ルシフォールは涼しい顔をしているが、その耳は彼女と同じ赤色だった。
「ありがとう、リリーシュ」
(ルシフォール様、笑ってるわ)
それだけで生きていて良かったと思える程、リリーシュはルシフォールを深く愛しはじめていた。大勢の人がいる前でこんな事、本当はするべきではないのに。
ルシフォールが喜んでくれたから、他の事はもうどうでもよくなってしまった。
「馬に乗るか?手綱は俺が持つから」
「良いのですか?ぜひ乗りたいです」
「俺の首に手を回して」
「は、はい」
ルシフォールの首にそっと腕を回すと、息がかかりそうな程距離が近付く。痛いくらいに心臓が高鳴るリリーシュと、彼女の甘い匂いに酔ってしまいそうなルシフォール。彼はリリーシュを落としてしまわない様、そのままゆっくりと馬に乗せた。
「ルシフォール様、ありがとうございます」
「あぁ」
(本当に誰よりも素敵だわ)
(こんなに可愛くてどうするんだ)
周囲はただただ、ルシフォールの行動と表情に目が飛び出しそうな程に驚くばかりだった。