ことなかれ主義令嬢は、男色家と噂される冷徹王子の溺愛に気付かない。
それから暫くの間、ガゼボの中で二人は寄り添っていた。風の冷たさも気にならず、久し振りに感じる互いの温もりだけを感じていた。
リリーシュがふと空を見上げると、茜色に輝く夕日が雲の合間から薄く透けて見える。まるで絵画の様に美しく、彼女はほうっと感嘆の溜息を漏らした。
「見てください、ルシフォール様。夕焼けの空がとても綺麗です」
リリーシュに言われ、彼も空に視線を移す。確かに綺麗な茜色の空だったが、ルシフォールはそちらよりも隣に座るリリーシュから目が離せなかった。
ヘーゼルアッシュの瞳が朱を取り込み、その奥が燃えているかの様にきらきらと輝いている。それはまるで、彼女の心を表している様だとルシフォールは思った。
リリーシュは変わった。とても強く、美しい女性に。彼女をこんな風に変えたきっかけが自分であると思うと、ルシフォールは嬉しくて堪らなかった。
母親に愛されず、兄弟ともどこか距離があり、周囲からは気を遣われた。女性不信に陥ってからは特に、自分は一生愛する事も愛される事もないまま死んでいくのだと思っていた。
「リリーシュ」
「はい」
「お前に出会えて良かった」
ルシフォールは真っ直ぐに、そのアイスブルーの瞳を彼女に向ける。リリーシュは一瞬驚いた様に固まったが、すぐに可愛らしくはにかんだ。
「私もです、ルシフォール様」
「お前のいない人生は、もう考えられない」
「ルシフォール、様」
「愛している」
紡がれる愛の言葉に、リリーシュの顔は夕日に負けない程に赤く染まる。彼女の一挙手一投足が愛おしくて堪らないルシフォールは、尚も言葉を続けた。
「俺はお前が、可愛くて仕方ないんだ。離れて暮らしていると、寂しくて堪らない」
「あ、あのルシフォール様」
「リリーシュが俺達の未来の為に頑張ってくれている事は分かっている。だが、お前の居ない毎日は本当につまらないんだ」
「え、えっとその…」
「そうやって赤い顔で戸惑っている姿も、本当に可愛い。出来るなら今すぐ攫ってしまいたいくらいだ」
「ど、どうなされたのですかルシフォール様」
とんでもなく甘ったるい顔をしてそんな台詞をぽんぽんと口にするルシフォールに、リリーシュの顔は最早熟れた林檎のように真っ赤だ。
どんどんと近付いてくる綺麗なアイスブルーの瞳に、どうして良いのか分からず彼女はただ口をぱくぱくとする事しか出来ない。
「本当はいつもこんな風に思っている。もうすぐ別れてしまうのだと思うと、言わずにはいられなかった」
「ルシフォール様…」
「離れ難いな」
ルシフォールの瞳がスッと細められ、そのしなやかな指がリリーシュの頬へと伸ばされる。魔法でもかけられたかの様に、彼女はルシフォールから視線が逸らせない。
「リリーシュ…」
「はいはい、残念だけどそろそろ時間だよルシフォール殿下」
指が頬に触れる直前、背後から声を掛けられる。二人は大袈裟なほどビクリと体を跳ねさせた。
「お邪魔しちゃって申し訳ないなぁ」
「…お前、微塵もそんな事思っていないだろう」
「そんな事ないよ?」
ユリシスはにこにこと笑いながら、ルシフォールの肩にぽんと手を置いた。
その直後、彼に飛びかかりそうだったルシフォールをリリーシュが慌てて止めに入ったのは言うまでもない。
リリーシュがふと空を見上げると、茜色に輝く夕日が雲の合間から薄く透けて見える。まるで絵画の様に美しく、彼女はほうっと感嘆の溜息を漏らした。
「見てください、ルシフォール様。夕焼けの空がとても綺麗です」
リリーシュに言われ、彼も空に視線を移す。確かに綺麗な茜色の空だったが、ルシフォールはそちらよりも隣に座るリリーシュから目が離せなかった。
ヘーゼルアッシュの瞳が朱を取り込み、その奥が燃えているかの様にきらきらと輝いている。それはまるで、彼女の心を表している様だとルシフォールは思った。
リリーシュは変わった。とても強く、美しい女性に。彼女をこんな風に変えたきっかけが自分であると思うと、ルシフォールは嬉しくて堪らなかった。
母親に愛されず、兄弟ともどこか距離があり、周囲からは気を遣われた。女性不信に陥ってからは特に、自分は一生愛する事も愛される事もないまま死んでいくのだと思っていた。
「リリーシュ」
「はい」
「お前に出会えて良かった」
ルシフォールは真っ直ぐに、そのアイスブルーの瞳を彼女に向ける。リリーシュは一瞬驚いた様に固まったが、すぐに可愛らしくはにかんだ。
「私もです、ルシフォール様」
「お前のいない人生は、もう考えられない」
「ルシフォール、様」
「愛している」
紡がれる愛の言葉に、リリーシュの顔は夕日に負けない程に赤く染まる。彼女の一挙手一投足が愛おしくて堪らないルシフォールは、尚も言葉を続けた。
「俺はお前が、可愛くて仕方ないんだ。離れて暮らしていると、寂しくて堪らない」
「あ、あのルシフォール様」
「リリーシュが俺達の未来の為に頑張ってくれている事は分かっている。だが、お前の居ない毎日は本当につまらないんだ」
「え、えっとその…」
「そうやって赤い顔で戸惑っている姿も、本当に可愛い。出来るなら今すぐ攫ってしまいたいくらいだ」
「ど、どうなされたのですかルシフォール様」
とんでもなく甘ったるい顔をしてそんな台詞をぽんぽんと口にするルシフォールに、リリーシュの顔は最早熟れた林檎のように真っ赤だ。
どんどんと近付いてくる綺麗なアイスブルーの瞳に、どうして良いのか分からず彼女はただ口をぱくぱくとする事しか出来ない。
「本当はいつもこんな風に思っている。もうすぐ別れてしまうのだと思うと、言わずにはいられなかった」
「ルシフォール様…」
「離れ難いな」
ルシフォールの瞳がスッと細められ、そのしなやかな指がリリーシュの頬へと伸ばされる。魔法でもかけられたかの様に、彼女はルシフォールから視線が逸らせない。
「リリーシュ…」
「はいはい、残念だけどそろそろ時間だよルシフォール殿下」
指が頬に触れる直前、背後から声を掛けられる。二人は大袈裟なほどビクリと体を跳ねさせた。
「お邪魔しちゃって申し訳ないなぁ」
「…お前、微塵もそんな事思っていないだろう」
「そんな事ないよ?」
ユリシスはにこにこと笑いながら、ルシフォールの肩にぽんと手を置いた。
その直後、彼に飛びかかりそうだったルシフォールをリリーシュが慌てて止めに入ったのは言うまでもない。