ことなかれ主義令嬢は、男色家と噂される冷徹王子の溺愛に気付かない。
その後も相変わらずユリシスとルシフォールは会話を続け、リリーシュはリリーシュで勝手に考え事をする。時折何か言われれば、それに対して素直な意見を返した。
「あぁ、そういえば一番大事な事をまだ聞いていなかったね」
ユリシスは思い出したかの様に、手をポンと叩く。リリーシュらキョトンとして、彼に視線を送った。
「僕達、君に聞きたい事があるんだ」
「聞きたい事でございますか?」
「二日前、僕と庭園で会ったでしょう?その後、君は熱心に雪で何かを作っていたよね?」
「雪で…あぁ、はい。確かに私雪遊びをしておりました」
リリーシュは素直に答えた後、またルシフォール殿下に「公爵令嬢の振る舞いではない」などと嫌味を言われると、身構える。しかし、彼はただ無言で紅茶を嗜んでいるだけだった。
「ルシフォールの部屋から見ていたんだけれど、あそこからでは良く分からなかったんだ。あれは何だったのか、教えてくれないかい?」
「はい。あれは馬です。我ながら上手く出来たと思っていたのですが、やはり上からではきちんと見えなかったのですね」
「きっと、僕は横で見ても分からなかったと思う」
「はい?今、何か仰いましたか?」
「いいや?別に何も」
ボソボソと呟いたユリシスの言葉をリリーシュはハッキリと聞き取れなかったが、本人が何でもないと言うなら気にしなくて良いのだろうと、彼女はそれ以上追求しなかった。
「ルシフォールの勝ちだね」
「…別に嬉しくない」
「やっぱり、結婚相手の事だし君の方が良く理解しているのかな」
「意味の分からない事を言うな」
「あの…?」
リリーシュは理解が出来ず、首を傾げる。そんな彼女を見てユリシスは楽しげに笑った。
「ねぇリリーシュ。君はどうして、あんな場所に馬なんて作ったの?そんなに馬が好きなのかな」
「いいえ、私はあまり馬に触れた事がありません。ユリシス様が、ルシフォール殿下は乗馬が趣味だと仰っていましたので。それに昨日はとても冷え込んでいましたから、少しでも楽しんで頂けたらと」
「…」
「だけど、ルシフォールがそれに気付かない可能性だってあった訳だよね?」
「それでも構いませんわ。久し振りに雪遊びに熱中出来た事が、とても楽しかったのですから」
リリーシュはユリシスを見ながら、ヘーゼルアッシュの瞳をふにゃりと楽しげに細める。その笑顔を側から眺めていたルシフォールは、何故かムカムカとしたものが心臓の奥から込み上げてくるのを感じていた。
「はっ。あれが馬?お前、随分と芸術的な才能がないんだな」
「ですけれど、殿下は私がこしらえたものが馬だと分かってくださったのですよね?」
「…そんなものは偶然だ。あんな歪な雪の塊など見て、誰が喜ぶものか」
「おい、ルシフォール」
鼻で笑いながらリリーシュを見下すルシフォールを、ユリシスが嗜める。しかしリリーシュに、特段気にした様子は見られなかった。
「では次は、もっと上手に出来るよう精進致します」
手の霜焼けが治ったらまた挑戦してみたいと、彼女は心の中で微笑んだ。
「あぁ、そういえば一番大事な事をまだ聞いていなかったね」
ユリシスは思い出したかの様に、手をポンと叩く。リリーシュらキョトンとして、彼に視線を送った。
「僕達、君に聞きたい事があるんだ」
「聞きたい事でございますか?」
「二日前、僕と庭園で会ったでしょう?その後、君は熱心に雪で何かを作っていたよね?」
「雪で…あぁ、はい。確かに私雪遊びをしておりました」
リリーシュは素直に答えた後、またルシフォール殿下に「公爵令嬢の振る舞いではない」などと嫌味を言われると、身構える。しかし、彼はただ無言で紅茶を嗜んでいるだけだった。
「ルシフォールの部屋から見ていたんだけれど、あそこからでは良く分からなかったんだ。あれは何だったのか、教えてくれないかい?」
「はい。あれは馬です。我ながら上手く出来たと思っていたのですが、やはり上からではきちんと見えなかったのですね」
「きっと、僕は横で見ても分からなかったと思う」
「はい?今、何か仰いましたか?」
「いいや?別に何も」
ボソボソと呟いたユリシスの言葉をリリーシュはハッキリと聞き取れなかったが、本人が何でもないと言うなら気にしなくて良いのだろうと、彼女はそれ以上追求しなかった。
「ルシフォールの勝ちだね」
「…別に嬉しくない」
「やっぱり、結婚相手の事だし君の方が良く理解しているのかな」
「意味の分からない事を言うな」
「あの…?」
リリーシュは理解が出来ず、首を傾げる。そんな彼女を見てユリシスは楽しげに笑った。
「ねぇリリーシュ。君はどうして、あんな場所に馬なんて作ったの?そんなに馬が好きなのかな」
「いいえ、私はあまり馬に触れた事がありません。ユリシス様が、ルシフォール殿下は乗馬が趣味だと仰っていましたので。それに昨日はとても冷え込んでいましたから、少しでも楽しんで頂けたらと」
「…」
「だけど、ルシフォールがそれに気付かない可能性だってあった訳だよね?」
「それでも構いませんわ。久し振りに雪遊びに熱中出来た事が、とても楽しかったのですから」
リリーシュはユリシスを見ながら、ヘーゼルアッシュの瞳をふにゃりと楽しげに細める。その笑顔を側から眺めていたルシフォールは、何故かムカムカとしたものが心臓の奥から込み上げてくるのを感じていた。
「はっ。あれが馬?お前、随分と芸術的な才能がないんだな」
「ですけれど、殿下は私がこしらえたものが馬だと分かってくださったのですよね?」
「…そんなものは偶然だ。あんな歪な雪の塊など見て、誰が喜ぶものか」
「おい、ルシフォール」
鼻で笑いながらリリーシュを見下すルシフォールを、ユリシスが嗜める。しかしリリーシュに、特段気にした様子は見られなかった。
「では次は、もっと上手に出来るよう精進致します」
手の霜焼けが治ったらまた挑戦してみたいと、彼女は心の中で微笑んだ。