裏稼業殺し屋の聖職者はうっかり取り憑かれた悪魔から逃げ切りたい!?
22.争いとは、どう転んでも無傷で終えることはできないものである。
**
いくつ心臓を集めても、欠けた空洞が埋まらない。
思い出したいのに、思い出せない。
そもそも、私は何を探しているのだろうとユズリハはぼんやりと考える。
「どうされました、陛下」
優しげな響きが耳朶に響き、ユズリハの思考が止まる。
ガラス瓶に沢山入った心臓を抱えたユズリハはじっと真っ黒な悪魔を感情のこもらない碧い瞳で見返し。
「コレには、私の心が見つからない」
いくつ集めても思い出せないの、と淡々とした口調でそう言った。
「お労しい。まだ、足らないのですよ」
陛下は長く眠っておられたので、と笑う傲慢を見ながら、本当にそうかしら? とユズリハは首を傾げる。
『ユズリハ!!』
ふと、ユズリハの脳裏に先程の光景が浮かぶ。
ユズリハと呼ぶ必死な声に、一瞬心がざわついた。
「……ねぇ、あの人は、だぁれ?」
いくつ心臓を奪っても満たされなかった欠けた記憶。
それを呼び起こすような、誰か。
「ああ、いけない」
ふわりと傲慢に目を隠され、ユズリハの記憶は沈み出す。
「知りたいのなら、奪えばいいのです」
耳元で囁かれる甘言は、ユズリハにゆっくりと広がって毒のように神経を侵す。
「……そう、そうね」
真っ暗な闇が思考を溶かしていく。
「取り戻さなきゃ」
過去と現在と未来が混ざって濁る。
「約束、だから」
誰としたどんな約束なのか分からないまま、うわ言のようにつぶやいたユズリハは、
「我が悪しき名において命令する。"傲慢"よ、あの男から心臓を奪いなさい」
そう傲慢に命じる。
途端、傲慢は自身の魔力が増強されるのを感じる。
「お望み通りに、我が陛下」
ああ、ようやく手に入る。
絶望はすぐそこだ。
にやっと口角を上げた傲慢はそれに応じた。
いくつ心臓を集めても、欠けた空洞が埋まらない。
思い出したいのに、思い出せない。
そもそも、私は何を探しているのだろうとユズリハはぼんやりと考える。
「どうされました、陛下」
優しげな響きが耳朶に響き、ユズリハの思考が止まる。
ガラス瓶に沢山入った心臓を抱えたユズリハはじっと真っ黒な悪魔を感情のこもらない碧い瞳で見返し。
「コレには、私の心が見つからない」
いくつ集めても思い出せないの、と淡々とした口調でそう言った。
「お労しい。まだ、足らないのですよ」
陛下は長く眠っておられたので、と笑う傲慢を見ながら、本当にそうかしら? とユズリハは首を傾げる。
『ユズリハ!!』
ふと、ユズリハの脳裏に先程の光景が浮かぶ。
ユズリハと呼ぶ必死な声に、一瞬心がざわついた。
「……ねぇ、あの人は、だぁれ?」
いくつ心臓を奪っても満たされなかった欠けた記憶。
それを呼び起こすような、誰か。
「ああ、いけない」
ふわりと傲慢に目を隠され、ユズリハの記憶は沈み出す。
「知りたいのなら、奪えばいいのです」
耳元で囁かれる甘言は、ユズリハにゆっくりと広がって毒のように神経を侵す。
「……そう、そうね」
真っ暗な闇が思考を溶かしていく。
「取り戻さなきゃ」
過去と現在と未来が混ざって濁る。
「約束、だから」
誰としたどんな約束なのか分からないまま、うわ言のようにつぶやいたユズリハは、
「我が悪しき名において命令する。"傲慢"よ、あの男から心臓を奪いなさい」
そう傲慢に命じる。
途端、傲慢は自身の魔力が増強されるのを感じる。
「お望み通りに、我が陛下」
ああ、ようやく手に入る。
絶望はすぐそこだ。
にやっと口角を上げた傲慢はそれに応じた。