裏稼業殺し屋の聖職者はうっかり取り憑かれた悪魔から逃げ切りたい!?

23.駆け引きとは、勝負の前から始まっているものである。

 先に仕掛けたのはパトリシアの方だった。
 身の丈ほどもある大鎌をクルクルとまるでバトンのように軽やかに振り回し、まるでダンスでも踊るかのように優雅に傲慢(プラド)の事を斬りつける。
 それは幾度となく傲慢(プラド)の身体を切り裂くが、次の瞬間にはまるで何もなかったかのように元に戻っていた。

「あらまぁ。"傲慢"ったら、すでに"命令"を頂き済みでしたの?」

 欲しがりさんですわねぇ、と口角を上げたパトリシアは、

「それでこそ壊しがいがあるというもの。ガッカリさせないでくださいませね? ここ最近の私は、魔王さまの代わりに平和主義者を装っておりましたので、喰いでのある獲物に飢えているのです」

 攻撃の手を一切緩めることなく連続的に斬りかかる。

「ワンパターン、だな」

 その攻撃をいなし、足で軽く止めた傲慢(プラド)は、

「お前の攻撃は1000年前から見飽きているし、知り尽くしている。いつだって力押しで、捻りがない」

 悪魔らしく傲慢にそう言った。

「あなたは相変わらずの足ぐせですわね。相手を踏みつけることに躊躇いがない」

 私の可愛い武器を踏まないでいただけます? と睨むパトリシアは傲慢(プラド)の足をどけようと力を込める。
 だが、ギリギリと嫌な音を立てるだけでびくともしない。

「お互い様だろう。お前だって雑草どもを踏みつけ、薙ぎ払い、喰らい尽くしてきたくせに」

 パトリシアを覗き込み、その名の通りにと嘲笑する傲慢(プラド)

「……節操なく喰い荒らすような真似は飽きましたわ。今は縛りプレイがブームですの」

 情報が古くてよ? と挑発を流したパトリシアに動じることのない傲慢(プラド)は、

「いいや、お前の本質は何も変わちゃいない。お前の燃費が非常に悪い、ってところもな」

 そう言って、そのままパトリシアの大鎌をへし折った。
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