裏稼業殺し屋の聖職者はうっかり取り憑かれた悪魔から逃げ切りたい!?
24.名前とは、その存在を明確にするためのモノである。
「なっ!?」
傲慢の手からなくなった階級証が空中でキラキラと輝く。
それと同時にパトリシアの身体から力が抜け、傲慢は突然解放される。
見開かれたままの空色の瞳は瞳孔が開いており、ぴくりとも動かない。
そこにあるのは、既に持ち主を亡くしたただの亡骸。
一体何が起きたのか、と思っていた傲慢の目に先日ズタボロに引き裂いた人間が映る。
「グレイ・アーディ」
あの時はパトリシアの妨害にあったが、この男を殺すことも目的の一つだったと思い出す。
ユズリハが会いたがったたった一人の肉親。その心臓を抉り取り改竄した過去を戻せば、自分のせいで兄が死んだと知ったユズリハの心は絶望し簡単に壊れるだろう。
そうなれば、クロアの魂から魔王の鍵も取り出せる。
「そちらから出てきてくれるなんて、捜す手間が省け」
「いつまでそうしている」
悪魔が死んだフリなんて悪趣味だ、と傲慢の言葉を遮って、グレイの呆れた声が響く。
「仕方ねぇな。言えばいいんだろ、言えば」
銃を構えたままチッとグレイは舌打ちする。
それまで夜を支配するかのように留まっていた雲が流れ、月の光が差し込み始めた。
「契約に基づき命令する。狩れ、暴食」
グレイの命令に応えるように、キラキラと輝いていた光が集まり、人型を作る。
「ふふっ♪ ああ、悪くない気分ですわね」
カツンとヒールの音を慣らし、暗闇から現れた彼女は妖艶に笑う。
月明かりが照らし出したのは、一人の悪魔の姿。
ブルーパープルの髪と特徴的な黒い角に尖った耳。ピンク色の大きな瞳は自信に満ち溢れており、赤い唇は楽しげに弧を描いていた。
「素敵な夜ですね、愛しい私の旦那さま」
よく"私"の名がお分かりになりましたね、とグレイの隣に並んだ彼女は、
「改めてはじめまして、ですね。旦那さま。七大悪魔がひとり、暴食を司る"ベルゼ"でございます。ああ、でも気軽にパトリシアとお呼び頂いても構いませんわよ?」
パトリシアの呼び名も結構気に入ってますの、とパトリシアは悪魔としての名を名乗った。
「ふふっ♪ 何故、と驚いてますわね。"傲慢"」
にやっと口角を上げ、パトリシアが手の平に水色の淡い光が集まり始める。
「簡単な事です。私、新しい魔法の開発と称して、少々階級証に細工を施しておいたのですよ」
「細工?」
眉を寄せ険しい表情を浮かべる傲慢にいつも通り揶揄うような口調で話しかけるパトリシア。
「ええ、クロアが言っていたのです。どうして悪魔は貯金をしないのか、と」
圧倒的に他者を蹂躙する力を持つ悪魔にとって、使わずに持て余した力を保管して置くなどという概念は存在しなかった。
だが、クロアと過ごし彼女を通して人間の考え方に興味を持ったパトリシアは長い年数をかけてそれを実行した。
つまり普段使わない分の彼女と武器の存在を階級証に閉じ込め保存していたのだ。
この魔法の問題点をあげるなら階級証を壊し暴食を捕まえられる存在がいない、という点。
だが、その条件も悪魔に傷を負わせられる聖銃を持ち、自身の力だけでパトリシアの本当の名前に気づいたグレイの存在でクリアした。
「あなたがユズリハの鍵を使ってこちらに渡って下さったおかげで階級証に隠した魔力は無傷」
パトリシアは、光を掴んで武器を向ける。
それは先程とは違う形をした大鎌で、水色のオーラを纏っていた。
「さて、種を明かしたところで反撃開始といたしましょうか?」
ふふっと楽しげに微笑みかけた。
傲慢の手からなくなった階級証が空中でキラキラと輝く。
それと同時にパトリシアの身体から力が抜け、傲慢は突然解放される。
見開かれたままの空色の瞳は瞳孔が開いており、ぴくりとも動かない。
そこにあるのは、既に持ち主を亡くしたただの亡骸。
一体何が起きたのか、と思っていた傲慢の目に先日ズタボロに引き裂いた人間が映る。
「グレイ・アーディ」
あの時はパトリシアの妨害にあったが、この男を殺すことも目的の一つだったと思い出す。
ユズリハが会いたがったたった一人の肉親。その心臓を抉り取り改竄した過去を戻せば、自分のせいで兄が死んだと知ったユズリハの心は絶望し簡単に壊れるだろう。
そうなれば、クロアの魂から魔王の鍵も取り出せる。
「そちらから出てきてくれるなんて、捜す手間が省け」
「いつまでそうしている」
悪魔が死んだフリなんて悪趣味だ、と傲慢の言葉を遮って、グレイの呆れた声が響く。
「仕方ねぇな。言えばいいんだろ、言えば」
銃を構えたままチッとグレイは舌打ちする。
それまで夜を支配するかのように留まっていた雲が流れ、月の光が差し込み始めた。
「契約に基づき命令する。狩れ、暴食」
グレイの命令に応えるように、キラキラと輝いていた光が集まり、人型を作る。
「ふふっ♪ ああ、悪くない気分ですわね」
カツンとヒールの音を慣らし、暗闇から現れた彼女は妖艶に笑う。
月明かりが照らし出したのは、一人の悪魔の姿。
ブルーパープルの髪と特徴的な黒い角に尖った耳。ピンク色の大きな瞳は自信に満ち溢れており、赤い唇は楽しげに弧を描いていた。
「素敵な夜ですね、愛しい私の旦那さま」
よく"私"の名がお分かりになりましたね、とグレイの隣に並んだ彼女は、
「改めてはじめまして、ですね。旦那さま。七大悪魔がひとり、暴食を司る"ベルゼ"でございます。ああ、でも気軽にパトリシアとお呼び頂いても構いませんわよ?」
パトリシアの呼び名も結構気に入ってますの、とパトリシアは悪魔としての名を名乗った。
「ふふっ♪ 何故、と驚いてますわね。"傲慢"」
にやっと口角を上げ、パトリシアが手の平に水色の淡い光が集まり始める。
「簡単な事です。私、新しい魔法の開発と称して、少々階級証に細工を施しておいたのですよ」
「細工?」
眉を寄せ険しい表情を浮かべる傲慢にいつも通り揶揄うような口調で話しかけるパトリシア。
「ええ、クロアが言っていたのです。どうして悪魔は貯金をしないのか、と」
圧倒的に他者を蹂躙する力を持つ悪魔にとって、使わずに持て余した力を保管して置くなどという概念は存在しなかった。
だが、クロアと過ごし彼女を通して人間の考え方に興味を持ったパトリシアは長い年数をかけてそれを実行した。
つまり普段使わない分の彼女と武器の存在を階級証に閉じ込め保存していたのだ。
この魔法の問題点をあげるなら階級証を壊し暴食を捕まえられる存在がいない、という点。
だが、その条件も悪魔に傷を負わせられる聖銃を持ち、自身の力だけでパトリシアの本当の名前に気づいたグレイの存在でクリアした。
「あなたがユズリハの鍵を使ってこちらに渡って下さったおかげで階級証に隠した魔力は無傷」
パトリシアは、光を掴んで武器を向ける。
それは先程とは違う形をした大鎌で、水色のオーラを纏っていた。
「さて、種を明かしたところで反撃開始といたしましょうか?」
ふふっと楽しげに微笑みかけた。