裏稼業殺し屋の聖職者はうっかり取り憑かれた悪魔から逃げ切りたい!?
4.押し売りとは、気づいた時には完了しているものである。
パトリシアの遺髪をそっと依頼人の元に返した後、場所を拠点に移した。
「……すっかり元通り、だな」
あれだけ炎に焼かれたというのに、元に戻るのは一瞬で。
連れ帰ったパトリシアは傷一つなく、地下室で見つけた時と同じ姿のままそこにいた。
「ふふ、現状復帰程度なら朝飯前ですわ」
もう夜ですけどと微笑んだパトリシアは、
「ただまぁ、現状復帰以上のことはできないのですけれど」
パラッと服をめくって、抉れた身体をグレイに見せる。
悪魔の力をもってしても、生前に失われたモノを元に戻す術はないらしい。
「……さっさと仕舞え」
ヒトに身体を簡単に見せるなと眉を顰めるグレイに、
「まぁ。先程はヒトの胸元に容赦なく手を突っ込んできたではありませんか?」
パトリシアは楽しげな声を上げる。
確かに事実には違いないが、パトリシアの悪意しか感じない物言いに対してグレイは全力で異議を唱えたい。
眉間にシワのよったグレイを見ながら、
「お約束ですから、旦那さまの疑問にお答えいたしましょう」
とパトリシアは小首を傾げてそう言った。
パトリシアの言動に振り回されても何の進展も得られない。そう判断したグレイは、
「何故、異界を渡った?」
と悪魔に問う。
「少々、探し物をしておりまして」
彼女は端的に目的を明かした。
「探し物?」
「ええ、私にとってとても大切なモノです。奪われて、アレがコチラ側に渡ったところまでは突き止めましたが、そこから先の足取りが掴めておりませんでした」
なので渡って来ました、と大したことないように話すが、実体のない世界に渡るのは簡単な事ではない。
それだけ力のある悪魔なのだろう。
「真名は?」
「仮初でも聖職者を名乗るなら、旦那さまがお当てになって?」
秘密のある女の方が魅力的でしょう? とパトリシアは肩を竦めた。
「それまではどうぞパトリシアとお呼びくださいませ」
と微笑みパチンと両手を叩いたパトリシアは、
「ああ、そうでしたわ。旦那さまの関心ごとはパトリシアの心臓の行方でしたわね」
と再び胸元を寛げる。
「旦那さまはこれを見て、どう思いました?」
収まるべきモノを失くし、ぽっかりと空いた穴。
だが存外傷口は綺麗で必要以上に傷つけられてはいなかった。
「素人の仕業じゃないな。綺麗に目的のモノだけを抉っている」
「ご明察です、さすが旦那さま!」
伊達に殺してないですね! なんて悪魔に褒められても嬉しくもなんともない。
「私の目的のモノを持っているのもそして旦那さまの獲物も同一人物、ですわ」
ね、私を側に侍らせた方が合理的でしょう? とパトリシアは口角を上げる。
「……すっかり元通り、だな」
あれだけ炎に焼かれたというのに、元に戻るのは一瞬で。
連れ帰ったパトリシアは傷一つなく、地下室で見つけた時と同じ姿のままそこにいた。
「ふふ、現状復帰程度なら朝飯前ですわ」
もう夜ですけどと微笑んだパトリシアは、
「ただまぁ、現状復帰以上のことはできないのですけれど」
パラッと服をめくって、抉れた身体をグレイに見せる。
悪魔の力をもってしても、生前に失われたモノを元に戻す術はないらしい。
「……さっさと仕舞え」
ヒトに身体を簡単に見せるなと眉を顰めるグレイに、
「まぁ。先程はヒトの胸元に容赦なく手を突っ込んできたではありませんか?」
パトリシアは楽しげな声を上げる。
確かに事実には違いないが、パトリシアの悪意しか感じない物言いに対してグレイは全力で異議を唱えたい。
眉間にシワのよったグレイを見ながら、
「お約束ですから、旦那さまの疑問にお答えいたしましょう」
とパトリシアは小首を傾げてそう言った。
パトリシアの言動に振り回されても何の進展も得られない。そう判断したグレイは、
「何故、異界を渡った?」
と悪魔に問う。
「少々、探し物をしておりまして」
彼女は端的に目的を明かした。
「探し物?」
「ええ、私にとってとても大切なモノです。奪われて、アレがコチラ側に渡ったところまでは突き止めましたが、そこから先の足取りが掴めておりませんでした」
なので渡って来ました、と大したことないように話すが、実体のない世界に渡るのは簡単な事ではない。
それだけ力のある悪魔なのだろう。
「真名は?」
「仮初でも聖職者を名乗るなら、旦那さまがお当てになって?」
秘密のある女の方が魅力的でしょう? とパトリシアは肩を竦めた。
「それまではどうぞパトリシアとお呼びくださいませ」
と微笑みパチンと両手を叩いたパトリシアは、
「ああ、そうでしたわ。旦那さまの関心ごとはパトリシアの心臓の行方でしたわね」
と再び胸元を寛げる。
「旦那さまはこれを見て、どう思いました?」
収まるべきモノを失くし、ぽっかりと空いた穴。
だが存外傷口は綺麗で必要以上に傷つけられてはいなかった。
「素人の仕業じゃないな。綺麗に目的のモノだけを抉っている」
「ご明察です、さすが旦那さま!」
伊達に殺してないですね! なんて悪魔に褒められても嬉しくもなんともない。
「私の目的のモノを持っているのもそして旦那さまの獲物も同一人物、ですわ」
ね、私を側に侍らせた方が合理的でしょう? とパトリシアは口角を上げる。