大嫌い同士の大恋愛     ー結婚狂騒曲ー
プロローグ

 ――結婚、しねぇか。


 何のひねりもないプロポーズ。

 でも、それが、アイツらしくて、私は確かにうれしかったのに。



(ひじり)……結婚って、何なんだろう……」


「ええー……羽津紀(うづき)、何で、そんなにテンション低いのー??」


 日曜夜、いつもの居酒屋で、向かい合うのは、恋人ではなく、通り過ぎる男性が次々と視線を奪われるほどの美貌の親友だ。
 先ほどまで、当の恋人――三ノ宮(さんのみや)江陽(こうよう)と、婚約指輪を見に行っていたが、立て続けに勧められギブアップ。
 ()()うの(てい)でジュエリーショップを後にし――


 ――今日は、もう、帰る!


 送る、と、きかない江陽を完全に無視し、一人、その場からバスで会社借り上げのマンションへと帰宅。
 そのまま隣の部屋で、おひとり様の休日を満喫していた聖を、半ば強制的に引きずり出し、そのままココへ直行したのだった。


 プロポーズがうれしかったのは本当だ。
 江陽と付き合い始めて二年。
 時期的にも、そろそろ、とは感じていたのも確か。



 ――でも。


 ――……婚姻届け出して終わり、だけで、私は、本当に充分だったのだ。


 けれど、ヤツは違った。


 ――婚約指輪と、結婚指輪は必須だろ。

 ――結納の日取りは、おばさんと、妹達の都合もあるし、早目に決めようぜ。

 ――ああ、式に呼ぶ人間は、ウチの方が面倒だから、ちょっと大きめのトコにして――。


 次々と言われる耳慣れない言葉に、頭が追い付かず。


 ――……ねえ、江陽……結婚式とか、結納とか……しなきゃ、ダメなのかしら……?


 そう言った瞬間の、ヤツのショックを受けたような表情に、さすがに譲歩することにしたが……。



「――ヤツとの、結婚に対するテンションの差がキツいのよ……」


 そうボヤくと、私は、目の前のハイボール二杯目を、勢いよく流し込んだのだった……。

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