大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
社員通用口から出ると、帰宅する社員は、駐車場方面と、駅方面に向かう人達とで分かれていく。
そんな中、徒歩組の私達三人は、正面口から出て、スーパー方面へ。
けれど。
「――あ、来た!兄さん!」
そう言って、どこからか駆け寄って来た、ブレザー制服の男子学生。
私と聖は、お互いを見やり、目を丸くするが――
「……翔陽?」
かすかに動揺を見せた江陽を見上げると、ヤツは、表情を固くして私に視線を向けた。
「――弟の、翔陽だ」
「え」
すると、江陽とは真逆に、にこやかに微笑まれた。
「初めまして。三ノ宮翔陽、高校二年です。よろしくお願いします」
ハキハキした口調。
江陽よりも少しだけ低いが、それでも私が見上げるのに、少し辛いほどの身長。
スラリとした見た目は、たぶん、学校の女子が騒ぐ類の人種だろう。
そして、何より――顔立ちが、母親の亜澄さんにそっくりだ。
「――翔陽、何で……」
「え、だって、父さんも母さんも会ったのに、ボクだけ会った事無いなんて、ズルいでしょ?――”羽津紀さん”、早く会いたかったのに」
「うるせぇよ」
彼は、眉をしかめる江陽をスルーする。
そして――
「兄と並んでも遜色無いくらい、おキレイですね、羽津紀さん」
そう、悪びれもせずに言った相手は――
反対側にいた、聖、だった。
「おい、翔陽、そっちじゃねぇ!」
「え?」
キョトンとしている弟に、江陽は、私を引き寄せて言った。
「こっちが羽津紀だ!失礼な事言ってんじゃねぇ!」
「――え??」
呆然としながら、私に視線を向ける彼に、何だか申し訳なくなるが――一応、彼女であり、婚約者の努めとして挨拶する。
「――は、初めまして。……名木沢羽津紀です」
そう言って軽く会釈すると、彼は、視線を一瞬だけ逸らし、そして、言った。
「――本当に、あなたです?」
「……そうですが」
「翔陽!」
江陽が、怒り心頭になっているのに気づくと、私は、そっと、ヤツの手を握り、チラリと見上げる。
――夕方の往来よ、落ち着きなさい。
それが伝わったのか、ヤツは、大きく息を吐いた。
「……翔陽、まず、謝れ」
「何で?この女じゃ、見劣りしない?」
――……は??
言われた言葉に、頭が追いつかない。
いや、確かに、聖に比べたら、そう思われても納得がいくが――。
「テメェ、何て事言いやがる……っ……!!!」
硬直している私をかばうように、江陽が前に立ちはだかり、怒鳴りつける。
けれど、彼は、当然のように返した。
「だって、大叔父さんが言ってたじゃない、兄さんには、ちゃんとした女性を用意してるって」
「翔陽!!!」
――……え?
――……何の、コト……??
私は、機械のように、江陽を見上げた。
そんな中、徒歩組の私達三人は、正面口から出て、スーパー方面へ。
けれど。
「――あ、来た!兄さん!」
そう言って、どこからか駆け寄って来た、ブレザー制服の男子学生。
私と聖は、お互いを見やり、目を丸くするが――
「……翔陽?」
かすかに動揺を見せた江陽を見上げると、ヤツは、表情を固くして私に視線を向けた。
「――弟の、翔陽だ」
「え」
すると、江陽とは真逆に、にこやかに微笑まれた。
「初めまして。三ノ宮翔陽、高校二年です。よろしくお願いします」
ハキハキした口調。
江陽よりも少しだけ低いが、それでも私が見上げるのに、少し辛いほどの身長。
スラリとした見た目は、たぶん、学校の女子が騒ぐ類の人種だろう。
そして、何より――顔立ちが、母親の亜澄さんにそっくりだ。
「――翔陽、何で……」
「え、だって、父さんも母さんも会ったのに、ボクだけ会った事無いなんて、ズルいでしょ?――”羽津紀さん”、早く会いたかったのに」
「うるせぇよ」
彼は、眉をしかめる江陽をスルーする。
そして――
「兄と並んでも遜色無いくらい、おキレイですね、羽津紀さん」
そう、悪びれもせずに言った相手は――
反対側にいた、聖、だった。
「おい、翔陽、そっちじゃねぇ!」
「え?」
キョトンとしている弟に、江陽は、私を引き寄せて言った。
「こっちが羽津紀だ!失礼な事言ってんじゃねぇ!」
「――え??」
呆然としながら、私に視線を向ける彼に、何だか申し訳なくなるが――一応、彼女であり、婚約者の努めとして挨拶する。
「――は、初めまして。……名木沢羽津紀です」
そう言って軽く会釈すると、彼は、視線を一瞬だけ逸らし、そして、言った。
「――本当に、あなたです?」
「……そうですが」
「翔陽!」
江陽が、怒り心頭になっているのに気づくと、私は、そっと、ヤツの手を握り、チラリと見上げる。
――夕方の往来よ、落ち着きなさい。
それが伝わったのか、ヤツは、大きく息を吐いた。
「……翔陽、まず、謝れ」
「何で?この女じゃ、見劣りしない?」
――……は??
言われた言葉に、頭が追いつかない。
いや、確かに、聖に比べたら、そう思われても納得がいくが――。
「テメェ、何て事言いやがる……っ……!!!」
硬直している私をかばうように、江陽が前に立ちはだかり、怒鳴りつける。
けれど、彼は、当然のように返した。
「だって、大叔父さんが言ってたじゃない、兄さんには、ちゃんとした女性を用意してるって」
「翔陽!!!」
――……え?
――……何の、コト……??
私は、機械のように、江陽を見上げた。