大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
マンションの部屋の前まで、聖をどうにか支えながらたどり着くと、私は、自分の部屋に彼女を先に入れた。
「おい、羽津紀、聖は隣だろ」
それを見た江陽は、眉を寄せ、私に尋ねる。
「完全に酔っぱらってる時は、鍵がかけられないのよ、このコ」
「……まるで、妹だな」
「否定はしないけどね」
苦笑いで返せば、先に部屋の中に入った聖のテンションの高い声が聞こえた。
「羽津紀ー、おやすみー!」
「あ、コラ!メイクだけでも落としなさい!」
「えー!面倒ー!」
そのまま、ベッドの方に向かう気配を感じ、慌てて止めようと、靴を脱ぐと、不意に腕を引かれた。
「……何よ。聖が寝落ちしちゃうじゃない」
「――うーちゃん」
そう呼ばれ、江陽を見上げると、真っ赤になって見つめられる。
条件反射のように跳ね上がる心臓を押さえ、私は、平静を装って尋ねた。
「……な、何?」
「――……絶対、離さねぇからな」
「え」
何を今さら、と、思うと、ヤツは私にすがるように抱き着く。
若干よろめきながらも、受け止めると、耳元でポツリと聞こえた。
「――……何言われようが――オレは、お前しかいらねぇんだから」
少しだけ香ってくるアルコールと、熱のこもった言葉に、クラっとしてしまう。
――昔は、何を言われようが、大嫌いだったのに。
――……今は、こんなにも、胸がいっぱいになってしまう。
「――……わかってるわよ、こうちゃん」
私は、そっとヤツを離すと、自分から口づける。
「……私だって――今さら離れるつもりは無いわよ」
「――ああ」
なだめるように言えば、キツく抱き締め、深く返された。
「――んっ……」
ここが、玄関だとか、奥に聖がいるとか――アルコールのせいか、どうでもよくなって。
江陽の首に腕を回せば、更に激しく口内をまさぐられる。
声を抑えながら、反応してしまう身体の熱を押さえつけるのに精一杯。
「――はぁっ……」
すると、ヤツはゆっくりと離れ、私の口元を拭った。
「……ヤベェ。――……聖がいるの、忘れてた」
「……忘れないでよ」
苦笑いで、私も同じように、江陽の口元を指で拭う。
「口紅、ついちゃったわね」
「別に、大して気にならねぇだろ。――普通にしてれば、たいていのヤツは、わざわざ見ねぇ」
「……まあ、アンタの背ならね」
ヤツは、私の手を取ると、今度はそこに口づける。
「ちょっ……」
「――週末、ちゃんと空けとけよ。聖との先約は無ぇだろ?」
「……な、無い、けど」
「今度こそ、指輪買うからな。候補、考えておけ」
「え、あ」
一瞬戸惑ってしまうのを見透かすように、江陽は、左手の薬指にキツく吸い付いた。
「こっ……⁉」
「――忘れンなよ?」
そう言って、再び軽くキスをすると、ヤツは、上機嫌になって部屋を後にした。
「ねー羽津紀ー、お布団敷いてー?」
すると、奥から聖がねだる声が聞こえ、我に返る。
「もう、先に顔洗いなさい!」
私は、江陽の置いていった熱と闘いながら、ようやく、部屋の中に入ったのだった。
「おい、羽津紀、聖は隣だろ」
それを見た江陽は、眉を寄せ、私に尋ねる。
「完全に酔っぱらってる時は、鍵がかけられないのよ、このコ」
「……まるで、妹だな」
「否定はしないけどね」
苦笑いで返せば、先に部屋の中に入った聖のテンションの高い声が聞こえた。
「羽津紀ー、おやすみー!」
「あ、コラ!メイクだけでも落としなさい!」
「えー!面倒ー!」
そのまま、ベッドの方に向かう気配を感じ、慌てて止めようと、靴を脱ぐと、不意に腕を引かれた。
「……何よ。聖が寝落ちしちゃうじゃない」
「――うーちゃん」
そう呼ばれ、江陽を見上げると、真っ赤になって見つめられる。
条件反射のように跳ね上がる心臓を押さえ、私は、平静を装って尋ねた。
「……な、何?」
「――……絶対、離さねぇからな」
「え」
何を今さら、と、思うと、ヤツは私にすがるように抱き着く。
若干よろめきながらも、受け止めると、耳元でポツリと聞こえた。
「――……何言われようが――オレは、お前しかいらねぇんだから」
少しだけ香ってくるアルコールと、熱のこもった言葉に、クラっとしてしまう。
――昔は、何を言われようが、大嫌いだったのに。
――……今は、こんなにも、胸がいっぱいになってしまう。
「――……わかってるわよ、こうちゃん」
私は、そっとヤツを離すと、自分から口づける。
「……私だって――今さら離れるつもりは無いわよ」
「――ああ」
なだめるように言えば、キツく抱き締め、深く返された。
「――んっ……」
ここが、玄関だとか、奥に聖がいるとか――アルコールのせいか、どうでもよくなって。
江陽の首に腕を回せば、更に激しく口内をまさぐられる。
声を抑えながら、反応してしまう身体の熱を押さえつけるのに精一杯。
「――はぁっ……」
すると、ヤツはゆっくりと離れ、私の口元を拭った。
「……ヤベェ。――……聖がいるの、忘れてた」
「……忘れないでよ」
苦笑いで、私も同じように、江陽の口元を指で拭う。
「口紅、ついちゃったわね」
「別に、大して気にならねぇだろ。――普通にしてれば、たいていのヤツは、わざわざ見ねぇ」
「……まあ、アンタの背ならね」
ヤツは、私の手を取ると、今度はそこに口づける。
「ちょっ……」
「――週末、ちゃんと空けとけよ。聖との先約は無ぇだろ?」
「……な、無い、けど」
「今度こそ、指輪買うからな。候補、考えておけ」
「え、あ」
一瞬戸惑ってしまうのを見透かすように、江陽は、左手の薬指にキツく吸い付いた。
「こっ……⁉」
「――忘れンなよ?」
そう言って、再び軽くキスをすると、ヤツは、上機嫌になって部屋を後にした。
「ねー羽津紀ー、お布団敷いてー?」
すると、奥から聖がねだる声が聞こえ、我に返る。
「もう、先に顔洗いなさい!」
私は、江陽の置いていった熱と闘いながら、ようやく、部屋の中に入ったのだった。