大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
エレベーターが、あっさりと到着すると、私達は、そろって入り口へと歩き出す。
私は、空を見つめながら、聖の言葉を咀嚼し、つぶやいた。
「――やっぱり……ちょっと、甘えてるのかもね……」
それを聞き取った聖は、ギョッとして私を見下ろす。
「……う、羽津紀」
「何」
「やっと、進歩したんだねー!えらい、えらい!」
「はぁ⁉」
ニコニコしながら頭を撫でられ、私は、軽くその手を叩き落とす。
聖は、それを気にするでもなく、のぞき込んできた。
「だって、今までの羽津紀なら、他人に甘えるくらいなら、我慢するってタイプだったでしょ?」
「……っ……」
図星をさされ、口ごもる。
聖は、時々、こちらが言葉に詰まるような事を、あっさりと言うのだ。
「まあ、アタシにも甘えてくれてると、うれしいけどー?」
「……少しは、甘えてるつもりよ?」
何だかんだ、聖を甘えさせているつもりで――自分も甘えているような気がするのだ。
「そっかー!やったー!」
「ち、ちょっと、聖!」
もたれかかるように抱き着いてきた聖を支えると、マンションの門の前で待っていた江陽が、ギョッとして私達を見ていた。
「――江陽?」
「おう……はよ、羽津紀、聖」
「おはよー、江陽クン!」
私は、気まずそうに視線を向けるヤツから顔を背けた。
「羽津紀ー?」
キョトンとしている聖の手を取ると、足早に歩き出す。
「お、おい、羽津紀!」
慌てて追いかけて来る江陽を振り返ると、私は、キツくにらみ上げた。
「――話す事なんて、無いわよ。……この化石頭」
そう言い残すと、聖と手をつないだまま、会社まで向かった。
途中、すれ違う人達のいぶかし気な視線に気づき、途中で離したけれど。
結局、江陽は、私の機嫌が最悪なのを感じ取ったのか、少しだけ距離を空けて、ついてきた。
エレベーターでも、言葉を交わす事は無く。
聖の方が、間を保とうと必死だったので、少々申し訳無かったが、こればかりは、簡単に許すなどできないのだ。
企画の部屋に入ると、私は、すぐに席に向かう。
そして、昨日、片桐さんからもらった、たたき台を元に作ったフォームをチェックし、神屋課長に手渡した。
「おはよう、名木沢クン。早いね」
「――少々、急ぎましたので」
「残業して?」
「申し訳ありませんが、片手間にできるほど、器用ではありませんので」
「だろうと思ったけど」
苦笑いで受け取った課長は、サッと目を通し、赤ボールペンで、三か所、修正を入れた。
「――ココだけ直して。それで、データでちょうだい」
「承知しました」
私は、内心ホッとしながら、頭を下げると、すぐに席に戻った。
簡単な修正で済んだのは、やはり、片桐さんのたたき台がしっかりしていたからだろう。
――やっぱり、スゴイのよね。
私だけの――彼の肩書。
私の”戦友”は、とても――頼りになる人なのだ。
私は、空を見つめながら、聖の言葉を咀嚼し、つぶやいた。
「――やっぱり……ちょっと、甘えてるのかもね……」
それを聞き取った聖は、ギョッとして私を見下ろす。
「……う、羽津紀」
「何」
「やっと、進歩したんだねー!えらい、えらい!」
「はぁ⁉」
ニコニコしながら頭を撫でられ、私は、軽くその手を叩き落とす。
聖は、それを気にするでもなく、のぞき込んできた。
「だって、今までの羽津紀なら、他人に甘えるくらいなら、我慢するってタイプだったでしょ?」
「……っ……」
図星をさされ、口ごもる。
聖は、時々、こちらが言葉に詰まるような事を、あっさりと言うのだ。
「まあ、アタシにも甘えてくれてると、うれしいけどー?」
「……少しは、甘えてるつもりよ?」
何だかんだ、聖を甘えさせているつもりで――自分も甘えているような気がするのだ。
「そっかー!やったー!」
「ち、ちょっと、聖!」
もたれかかるように抱き着いてきた聖を支えると、マンションの門の前で待っていた江陽が、ギョッとして私達を見ていた。
「――江陽?」
「おう……はよ、羽津紀、聖」
「おはよー、江陽クン!」
私は、気まずそうに視線を向けるヤツから顔を背けた。
「羽津紀ー?」
キョトンとしている聖の手を取ると、足早に歩き出す。
「お、おい、羽津紀!」
慌てて追いかけて来る江陽を振り返ると、私は、キツくにらみ上げた。
「――話す事なんて、無いわよ。……この化石頭」
そう言い残すと、聖と手をつないだまま、会社まで向かった。
途中、すれ違う人達のいぶかし気な視線に気づき、途中で離したけれど。
結局、江陽は、私の機嫌が最悪なのを感じ取ったのか、少しだけ距離を空けて、ついてきた。
エレベーターでも、言葉を交わす事は無く。
聖の方が、間を保とうと必死だったので、少々申し訳無かったが、こればかりは、簡単に許すなどできないのだ。
企画の部屋に入ると、私は、すぐに席に向かう。
そして、昨日、片桐さんからもらった、たたき台を元に作ったフォームをチェックし、神屋課長に手渡した。
「おはよう、名木沢クン。早いね」
「――少々、急ぎましたので」
「残業して?」
「申し訳ありませんが、片手間にできるほど、器用ではありませんので」
「だろうと思ったけど」
苦笑いで受け取った課長は、サッと目を通し、赤ボールペンで、三か所、修正を入れた。
「――ココだけ直して。それで、データでちょうだい」
「承知しました」
私は、内心ホッとしながら、頭を下げると、すぐに席に戻った。
簡単な修正で済んだのは、やはり、片桐さんのたたき台がしっかりしていたからだろう。
――やっぱり、スゴイのよね。
私だけの――彼の肩書。
私の”戦友”は、とても――頼りになる人なのだ。