大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
お昼になり、一旦パソコンをスリープにすると、お弁当の袋を取り出す。
「名木沢さん、オッケーもらったかな?」
「あ、ハ、ハイ」
すると、それを見計らったように、片桐さんが尋ねてきたので、うなづいて返す。
「片桐さんのおかげです。簡単な修正で終わりました。――ありがとうございました」
「いや、僕は、僕がやりやすいように作っただけだよ」
「それでも、私にとっては難しいものだったので」
譲らない私に、彼は、口元を上げて返す。
「――なら、良かった。これから、忙しくなるね」
「そう、ですね」
「そんな中で悪いんだけど、昨日言ってた、四班全員の企画なんだけど――」
片桐さんは、そう言いかけ、言葉を切る。
「――また、午後からにしようか。お昼は、ちゃんとご飯食べないと」
昨日の自分の言葉を思い出したのか、苦笑いで私に言った。
私は、それにうなづき、お弁当袋を持つと、休憩室までひとり向かったのだった。
お昼時、少々込み合っている休憩室の中に入ると、私は、先に席を取っていた聖を見つける――が、途中で足が止まった。
「――……何でよ」
思わず、恨み言のようにつぶやいてしまった。
江陽が、聖と向かい合って座り、私を待っているではないか。
「あ、羽津紀ー、こっちー!」
そんな私の動揺を気にするでもなく、聖は、大きく手を振るので、渋々向かった。
「――……何で、いるのよ」
「……昼メシだろ。一緒にいて悪いかよ」
「――別に、どうぞ、ご自由に」
淡々と返すと、私は、自分のお弁当を開ける。
「あ、羽津紀ー、おかず、交換しよ?」
すると、聖がのぞき込んできて、箸でメインの厚揚げの肉巻きを指した。
「良いわよ。アンタ、今日は何作ったの?」
私は、彼女の手元を見やる。
最近、練習の成果が表れているのか、なかなか、美味しそうな中身である。
「えっとねー、ジャガイモ、チーズ乗せて焼いたのー」
照れながら言う聖は、とても可愛い。
私は、クスリ、と、微笑み、お弁当のフタに肉巻きを乗せる。
「じゃあ、味見ね」
「うん!」
聖はうなづき、そっと、ジャガイモを私のお弁当の空いたスペースに入れた。
まるで、女子高生のよう。
けれど、忙しい日々の中、こんなささやかなやり取りは、癒しでもあるのだ。
私は、そのままジャガイモを口に入れる。
「あら、美味しいわ」
「ホント⁉」
身を乗り出してくる聖を押さえながら、私は、うなづく。
「ええ、黒コショウ、ちゃんと効いてるわよ。しっかりできてるわ」
「やったー!」
まるで、テストで合格点をもらったように喜ぶ聖は、チラリと江陽を見やる。
「……ンだよ、聖」
「江陽クン、うらやましいー?」
「……るせぇよ」
ふてくされた江陽を、クスクスと笑い、聖は、私にそのキレイな顔を向けた。
「ねえ、羽津紀。そろそろ、機嫌直してあげたら?江陽クン、さみしそうだよー?」
「なっ……!ンな訳、ねぇだろ!」
一瞬で真っ赤になったヤツは、視線をあちこちにさまよわせる。
それがウソなのは、わかりきっているのに。
私は、あきれたようにヤツを見やると、自分の肉巻きを取り、ヤツに差し出した。
「――ハイ。……仕方ないから、あげるわよ、こうちゃん」
まるで、あーん、と、言わんばかりに差し出してしまい、我に返る。
だが、手を引く前に掴まれ、そのまま、あっさりと口にされてしまい、私は、身の置き場に弱ってしまったのだった。
「名木沢さん、オッケーもらったかな?」
「あ、ハ、ハイ」
すると、それを見計らったように、片桐さんが尋ねてきたので、うなづいて返す。
「片桐さんのおかげです。簡単な修正で終わりました。――ありがとうございました」
「いや、僕は、僕がやりやすいように作っただけだよ」
「それでも、私にとっては難しいものだったので」
譲らない私に、彼は、口元を上げて返す。
「――なら、良かった。これから、忙しくなるね」
「そう、ですね」
「そんな中で悪いんだけど、昨日言ってた、四班全員の企画なんだけど――」
片桐さんは、そう言いかけ、言葉を切る。
「――また、午後からにしようか。お昼は、ちゃんとご飯食べないと」
昨日の自分の言葉を思い出したのか、苦笑いで私に言った。
私は、それにうなづき、お弁当袋を持つと、休憩室までひとり向かったのだった。
お昼時、少々込み合っている休憩室の中に入ると、私は、先に席を取っていた聖を見つける――が、途中で足が止まった。
「――……何でよ」
思わず、恨み言のようにつぶやいてしまった。
江陽が、聖と向かい合って座り、私を待っているではないか。
「あ、羽津紀ー、こっちー!」
そんな私の動揺を気にするでもなく、聖は、大きく手を振るので、渋々向かった。
「――……何で、いるのよ」
「……昼メシだろ。一緒にいて悪いかよ」
「――別に、どうぞ、ご自由に」
淡々と返すと、私は、自分のお弁当を開ける。
「あ、羽津紀ー、おかず、交換しよ?」
すると、聖がのぞき込んできて、箸でメインの厚揚げの肉巻きを指した。
「良いわよ。アンタ、今日は何作ったの?」
私は、彼女の手元を見やる。
最近、練習の成果が表れているのか、なかなか、美味しそうな中身である。
「えっとねー、ジャガイモ、チーズ乗せて焼いたのー」
照れながら言う聖は、とても可愛い。
私は、クスリ、と、微笑み、お弁当のフタに肉巻きを乗せる。
「じゃあ、味見ね」
「うん!」
聖はうなづき、そっと、ジャガイモを私のお弁当の空いたスペースに入れた。
まるで、女子高生のよう。
けれど、忙しい日々の中、こんなささやかなやり取りは、癒しでもあるのだ。
私は、そのままジャガイモを口に入れる。
「あら、美味しいわ」
「ホント⁉」
身を乗り出してくる聖を押さえながら、私は、うなづく。
「ええ、黒コショウ、ちゃんと効いてるわよ。しっかりできてるわ」
「やったー!」
まるで、テストで合格点をもらったように喜ぶ聖は、チラリと江陽を見やる。
「……ンだよ、聖」
「江陽クン、うらやましいー?」
「……るせぇよ」
ふてくされた江陽を、クスクスと笑い、聖は、私にそのキレイな顔を向けた。
「ねえ、羽津紀。そろそろ、機嫌直してあげたら?江陽クン、さみしそうだよー?」
「なっ……!ンな訳、ねぇだろ!」
一瞬で真っ赤になったヤツは、視線をあちこちにさまよわせる。
それがウソなのは、わかりきっているのに。
私は、あきれたようにヤツを見やると、自分の肉巻きを取り、ヤツに差し出した。
「――ハイ。……仕方ないから、あげるわよ、こうちゃん」
まるで、あーん、と、言わんばかりに差し出してしまい、我に返る。
だが、手を引く前に掴まれ、そのまま、あっさりと口にされてしまい、私は、身の置き場に弱ってしまったのだった。