大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
「……こうちゃんのバカ……」
「――……うーちゃんが悪いんだろ」
結局、終業後、少し遠目のラブのつく方のホテルに入って数時間。
ベッドの上で、お互い裸になったまま、にらみ合う。
「人のせいにしないで。……もう、限界って、何回言ったと思ってるのよ」
「……だって、いつまで経っても結婚どころか、婚約指輪だって決まらねぇじゃねぇの。自覚が足りねぇから、させてンだろうが」
「横暴な事言わないでよ!」
「――じゃあ、やめるのか、結婚?」
「……っ……」
私は、思わず口を閉じてしまう。
すると、江陽は、まるで、勝った、とばかりに私を抱き締め、耳元で囁いた。
「なあ、うーちゃん、どうする?」
「……やっ……や、やめ、ない……けど……」
ゴニョゴニョと返せば、更に腕に力を込められる。
「……な、何よ……」
「いや、素直になったもんだな、と」
「うるさいわね!」
ニヤニヤとのぞき込まれ、ヤツを突き飛ばそうとするが、ビクともしない。
それが、また、腹立たしい。
「――うれしいんだよ。それくらい、わかれ」
そう言って、江陽は、私に口づけ、再び身体をまさぐる。
「こ、江陽!もう、無理!」
「――……ダメか?」
ギクリとし、慌てる私に、ヤツは甘えたように聞く。
「……ダ、ダメ、というか……明日、動けなくなる……」
「大丈夫だろ。最初よりは、慣れてきたじゃねぇか」
「やぁっ……!」
弱い部分を弄ばれ、すぐに身体は跳ね上がる。
「――かわいい」
「バカァ……」
「コレで、寝られるから――な?」
「……バカ……」
その言葉に、私は、あきらめ、江陽の首に腕を回した。
”初めて”の翌日のプロポーズ。
そこから、デートの度に身体を重ねているのは――少しだけ、他の恋人達と事情が違う。
お互いに求めているのは本当だけど――。
――今日は、大丈夫みたいね。
隣で、安らかな寝息を立てている江陽を見やると、私は、息を吐いた。
抱き締められたまま、ヤツの胸に頬を寄せる。
直接聞こえる規則正しい鼓動に、どこか、安心してしまうのは――二年前の事件のせいでもある。
ウチの会社の、女性社員のストーカー被害に遭った江陽は、無理心中のような形で頭を殴られ、三日も昏睡状態だったのだ。
その記憶は薄れるはずもなく、更に、プロポーズの前に、昔、コイツが遭った同じような被害を聞かされ、私の中に、不安の種が撒かれた。
――江陽は、高校の時、ストーカーの女性に一週間監禁されたのだそうだ。
そのせいで、女嫌い――いや、恐怖症になったのは、仕方のない事だろうとは思う。
最初は、何をキャラ付けのような、とも思ったけれど――事実は、そんな軽いものでは無かった。
そして、一緒に眠るようになって知った事――。
ヤツは、眠る度にうなされる事が多く、不眠症でもあったのだ。
けれど、睡眠薬に頼る事はしなかった。
――いや、できなかった。
高校の時の事件で、ヤツは、コーヒーにそれを入れられたのだから。
結局、医者にかかる事もできず、一人、耐え続けるしかなかったのだそうだ。
――……うーちゃんと一緒なら、寝られる。
しばらくした頃、一緒にベッドで横になっていると、不意にそう言われ、それ以降、なるべく休日は一緒にいるようにしているのだ。
「――……うーちゃんが悪いんだろ」
結局、終業後、少し遠目のラブのつく方のホテルに入って数時間。
ベッドの上で、お互い裸になったまま、にらみ合う。
「人のせいにしないで。……もう、限界って、何回言ったと思ってるのよ」
「……だって、いつまで経っても結婚どころか、婚約指輪だって決まらねぇじゃねぇの。自覚が足りねぇから、させてンだろうが」
「横暴な事言わないでよ!」
「――じゃあ、やめるのか、結婚?」
「……っ……」
私は、思わず口を閉じてしまう。
すると、江陽は、まるで、勝った、とばかりに私を抱き締め、耳元で囁いた。
「なあ、うーちゃん、どうする?」
「……やっ……や、やめ、ない……けど……」
ゴニョゴニョと返せば、更に腕に力を込められる。
「……な、何よ……」
「いや、素直になったもんだな、と」
「うるさいわね!」
ニヤニヤとのぞき込まれ、ヤツを突き飛ばそうとするが、ビクともしない。
それが、また、腹立たしい。
「――うれしいんだよ。それくらい、わかれ」
そう言って、江陽は、私に口づけ、再び身体をまさぐる。
「こ、江陽!もう、無理!」
「――……ダメか?」
ギクリとし、慌てる私に、ヤツは甘えたように聞く。
「……ダ、ダメ、というか……明日、動けなくなる……」
「大丈夫だろ。最初よりは、慣れてきたじゃねぇか」
「やぁっ……!」
弱い部分を弄ばれ、すぐに身体は跳ね上がる。
「――かわいい」
「バカァ……」
「コレで、寝られるから――な?」
「……バカ……」
その言葉に、私は、あきらめ、江陽の首に腕を回した。
”初めて”の翌日のプロポーズ。
そこから、デートの度に身体を重ねているのは――少しだけ、他の恋人達と事情が違う。
お互いに求めているのは本当だけど――。
――今日は、大丈夫みたいね。
隣で、安らかな寝息を立てている江陽を見やると、私は、息を吐いた。
抱き締められたまま、ヤツの胸に頬を寄せる。
直接聞こえる規則正しい鼓動に、どこか、安心してしまうのは――二年前の事件のせいでもある。
ウチの会社の、女性社員のストーカー被害に遭った江陽は、無理心中のような形で頭を殴られ、三日も昏睡状態だったのだ。
その記憶は薄れるはずもなく、更に、プロポーズの前に、昔、コイツが遭った同じような被害を聞かされ、私の中に、不安の種が撒かれた。
――江陽は、高校の時、ストーカーの女性に一週間監禁されたのだそうだ。
そのせいで、女嫌い――いや、恐怖症になったのは、仕方のない事だろうとは思う。
最初は、何をキャラ付けのような、とも思ったけれど――事実は、そんな軽いものでは無かった。
そして、一緒に眠るようになって知った事――。
ヤツは、眠る度にうなされる事が多く、不眠症でもあったのだ。
けれど、睡眠薬に頼る事はしなかった。
――いや、できなかった。
高校の時の事件で、ヤツは、コーヒーにそれを入れられたのだから。
結局、医者にかかる事もできず、一人、耐え続けるしかなかったのだそうだ。
――……うーちゃんと一緒なら、寝られる。
しばらくした頃、一緒にベッドで横になっていると、不意にそう言われ、それ以降、なるべく休日は一緒にいるようにしているのだ。