公爵の想い人は、時空を越えてやってきた隣国のパティシエールでした
「閣下、あちらのトレイから分けてもらいました。我々もいただきましょう」
配下の騎士が、別のテーブルのトレイからフィナンシェを入手してレナード公爵に手渡した。
抵抗も虚しく、あっさり公爵の手に渡ってしまったのだ。
伯母様は私が作ったと言わなかったから、どこかの土産物だと思っているだろう。
周りがみな食べていることもあって、迷うことなく口に入れ、何度か咀嚼する。
「レディ・・・・先ほど『公爵様にお出しするようなものではない』と口にされていたようですが、理由を伺ってもいいですか?」
やはり高貴な方の好みではなかったのだと、小さく息を吐く。
「・・申し訳ありません、お口に合わなかったでしょう・・。実は私が作ったお菓子で・・」
「えっ・・・・スカラ夫人、このレディは・・・・従者ではないですよね?」
「あら、ごめんなさい。まだ紹介していなかったわね。
レナード公爵、こちらはこの国のベリーフィールド伯爵令嬢のエマよ。私の姪なの。
そしてエマ、こちらは隣国のレナード公爵。第二騎士団の団長で、国境の警備を任務にされているから、よくここにも立ち寄ってくださるの」
伯母様の言葉を聞き不思議そうな表情を浮かべるレナード公爵をよそに、追い討ちをかけるように伯母様は誇らしげに言った。
「私の自慢の姪なのよ! 邸の侍従だけでなく、領地の民衆ともお茶会をするくらい思いやりのある令嬢なの」
伯母様・・。
そう思ってくれるのは嬉しいけれど、それを受け入れられるのは家族だけなのだ。
「令嬢自ら・・・・。それは素晴らしいですね」
「ええ、本当に」
「公爵様は・・・・に・・しないのですね・・」
消え入るような私の小さな呟きに、レナード公爵は『ん?』と首を傾げる。
私は、なんでもないと首を左右に振った。
配下の騎士が、別のテーブルのトレイからフィナンシェを入手してレナード公爵に手渡した。
抵抗も虚しく、あっさり公爵の手に渡ってしまったのだ。
伯母様は私が作ったと言わなかったから、どこかの土産物だと思っているだろう。
周りがみな食べていることもあって、迷うことなく口に入れ、何度か咀嚼する。
「レディ・・・・先ほど『公爵様にお出しするようなものではない』と口にされていたようですが、理由を伺ってもいいですか?」
やはり高貴な方の好みではなかったのだと、小さく息を吐く。
「・・申し訳ありません、お口に合わなかったでしょう・・。実は私が作ったお菓子で・・」
「えっ・・・・スカラ夫人、このレディは・・・・従者ではないですよね?」
「あら、ごめんなさい。まだ紹介していなかったわね。
レナード公爵、こちらはこの国のベリーフィールド伯爵令嬢のエマよ。私の姪なの。
そしてエマ、こちらは隣国のレナード公爵。第二騎士団の団長で、国境の警備を任務にされているから、よくここにも立ち寄ってくださるの」
伯母様の言葉を聞き不思議そうな表情を浮かべるレナード公爵をよそに、追い討ちをかけるように伯母様は誇らしげに言った。
「私の自慢の姪なのよ! 邸の侍従だけでなく、領地の民衆ともお茶会をするくらい思いやりのある令嬢なの」
伯母様・・。
そう思ってくれるのは嬉しいけれど、それを受け入れられるのは家族だけなのだ。
「令嬢自ら・・・・。それは素晴らしいですね」
「ええ、本当に」
「公爵様は・・・・に・・しないのですね・・」
消え入るような私の小さな呟きに、レナード公爵は『ん?』と首を傾げる。
私は、なんでもないと首を左右に振った。