公爵の想い人は、時空を越えてやってきた隣国のパティシエールでした
~ 第一章 ~

Side エマ

『エマ・ベリーフィールド伯爵令嬢、残念だが、あなたは皇太子妃に相応しくないと皇国議会にて決議された』


ん?
んん?


『よって、殿下の婚約者としての地位を今日限りで解くものとする』


はい?

何やら高らかに宣言されたけれど、いったいどういうこと?


「そんなっ! 議長、我が娘の何が至らなかったというのでしょうか!」

「ベリーフィールド伯爵、あなたはご令嬢の教育を間違えたようだ。妃としての素養は認めるが、病に倒れたり、厨房に入って粉にまみれて民衆と戯れるような妃殿下など、陛下も殿下も望んでいないのだよ」

「粉にまみれる・・・・。菓子を自ら作り民衆に配ることが、それほどに許されないのでしょうか?」

んー?
お菓子作りをするなら、厨房に入るのも粉にまみれるのも当然のこと。
何が問題だと言うの?

「妃殿下としての役割が理解できていないようだ。アンテローブ伯爵令嬢など、頻繁に貴族令嬢との茶会を開いて、各領地や他国の情報収集をしていると聞く。そのような者が皇室には必要なのだよ」

頻繁に茶会ねぇ・・。
様々なものをひけらかして、無駄遣いしているだけでしょうに。
はぁぁ、くだらない。

って。
ちょっと待って!
何・・・・このシチュエーション。

「ベリーフィールド伯爵、ご令嬢ともども、ご退出願おうか」

『議長』と呼ばれた男性にそう告げられ、ベリーフィールド伯爵の手が私の肩に伸びる。

えっ、私?
どうして?

「エマ、屋敷に帰ろう。これ以上、エマを侮辱されるのは父として耐えがたい」

伯爵は私に向かってそう言った。

ちょっと待って・・。
これは、つまり・・その・・。
エマ・・・・は、私?

「ショックで声も出ないのか・・。可哀想に・・さぁ、ここを出よう」

私はベリーフィールド伯爵に促されて会議場を後にし、皇宮の東門に横付けされた馬車に乗り込んだ。

どうやら私は、『エマ・ベリーフィールド伯爵令嬢』に、なってしまった・・らしい。




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