公爵の想い人は、時空を越えてやってきた隣国のパティシエールでした
25歳を過ぎた今でも、婚約者はおろか親しくしている貴族令嬢もいなかった。
20歳前後は、まだそういった話が山のようにあったものの、紹介される貴族令嬢に冷めた態度しか取れない俺に周りも諦めたようで、ここ数年は随分と静かに過ごしていた。
そんな俺の前に突然現れたエマ嬢に、驚くほどのスピードで気持ちが傾いている。
「レナード様、エマ様の着替えが済んだようですよ。食事も用意できましたし、お声がけをお願いします」
リチャードに促され、俺は私室に戻る。
まだ万全ではない身体にドレスは酷だし、従者に見られながらの食事も気が休まらないだろうと思い、俺はエマ嬢にシルエットの緩やかな服を準備させ、食事も消化の良い物を私室に運ばせた。
「エマ嬢、服の生地が傷に擦れて痛かったりしないだろうか。痛むようなら、もっとやわらかい生地の服を用意させるから遠慮せず言ってほしい。
あと食事も・・もし食べられるものがあれば、少しでも口にして。その方が回復が早くなると医師も言っていたから。
じゃあ・・後でまた、様子を見にくるよ」
他人がいては気になって食べづらいだろうと思い、ひと通り伝えたいことを言い終えて立ち去ろうとすると、『あの・・』とエマ嬢に呼び止められる。
「あ・・何か足りないものがあっただろうか・・・・この邸には若い女性がいないものだから、考えが及ばなくて」
「いえ・・そうではなく・・・・。準備していただいたものは、どれも私に合うものばかりです。ご配慮、感謝しています。
あの、正直に言うと、ひとりで食事をとるのが寂しくて。もし良ければ、食堂でいただいても構わないでしょうか・・」
俯いたエマ嬢を見て、考えが浮かんだ。
「それなら・・私がここで一緒に食べよう」
「えっ」
「私でも構わなければ、ここで一緒に食べるのはどうだろうか」
「それは・・・・。でも、本当に良いのですか?」
俺は頷き、廊下に控えていたリチャードに食事を運ぶように伝えると、すぐにふたり分のテーブルセットが出来上がった。
20歳前後は、まだそういった話が山のようにあったものの、紹介される貴族令嬢に冷めた態度しか取れない俺に周りも諦めたようで、ここ数年は随分と静かに過ごしていた。
そんな俺の前に突然現れたエマ嬢に、驚くほどのスピードで気持ちが傾いている。
「レナード様、エマ様の着替えが済んだようですよ。食事も用意できましたし、お声がけをお願いします」
リチャードに促され、俺は私室に戻る。
まだ万全ではない身体にドレスは酷だし、従者に見られながらの食事も気が休まらないだろうと思い、俺はエマ嬢にシルエットの緩やかな服を準備させ、食事も消化の良い物を私室に運ばせた。
「エマ嬢、服の生地が傷に擦れて痛かったりしないだろうか。痛むようなら、もっとやわらかい生地の服を用意させるから遠慮せず言ってほしい。
あと食事も・・もし食べられるものがあれば、少しでも口にして。その方が回復が早くなると医師も言っていたから。
じゃあ・・後でまた、様子を見にくるよ」
他人がいては気になって食べづらいだろうと思い、ひと通り伝えたいことを言い終えて立ち去ろうとすると、『あの・・』とエマ嬢に呼び止められる。
「あ・・何か足りないものがあっただろうか・・・・この邸には若い女性がいないものだから、考えが及ばなくて」
「いえ・・そうではなく・・・・。準備していただいたものは、どれも私に合うものばかりです。ご配慮、感謝しています。
あの、正直に言うと、ひとりで食事をとるのが寂しくて。もし良ければ、食堂でいただいても構わないでしょうか・・」
俯いたエマ嬢を見て、考えが浮かんだ。
「それなら・・私がここで一緒に食べよう」
「えっ」
「私でも構わなければ、ここで一緒に食べるのはどうだろうか」
「それは・・・・。でも、本当に良いのですか?」
俺は頷き、廊下に控えていたリチャードに食事を運ぶように伝えると、すぐにふたり分のテーブルセットが出来上がった。