公爵の想い人は、時空を越えてやってきた隣国のパティシエールでした
~ 第二章 ~

Side 公爵

エマ嬢がこの邸を去って、ほんの2日ほど。

「この邸は、随分と静かだったのだな・・」

俺のつぶやきを拾ったリチャードが苦笑いする。

「エマ様は、木漏れ日のようなお方でしたからね。朗らかで、従者にも分け隔てなく接してくださいましたし、みな寂しがっておりますよ。
まぁ、誰よりも寂しさを感じているのはレナード様でしょうけど。では、失礼いたします」


・・・・間違いない。

小さくため息が出る。

執務室から私室に抜け、エマ嬢のいなくなった部屋を見渡した。
綺麗に片付けられていて、エマ嬢がいた形跡もない。

何か忘れ物でもあれば。
それを口実にすぐにでも会いに行くのに・・。

俺はエマ嬢をスカラ夫人に引き渡した時、謝罪するとともに伝えた。
ベリーフィールド伯爵にエマ嬢との婚約を申し入れたい、ついては、スカラ夫人に仲介を頼みたい、と。

あらあら、まぁまぁと驚いたり喜んだりしながらも、スカラ夫人は任せてほしいと引き受けてくれた。


カツカツカツ・・。

靴音を響かせて向かってくる、あの足音。
俺は急いで執務室に戻る。

ガチャッと執務室のドアが開いた。


「久しいな、シオン。息災(そくさい)か?」

「はい、陛下。それはそうと、突然どうされたのです? 来訪のご予定は無かったかと」

「ん? 突然も何も、リチャードからの知らせを受けて、居ても立っても居られず飛んできた」


(続く)




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