【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
やはりここでもエドガーは注目の的だった。町行く女性たちはすれ違いざまにエドガーに羨望の眼差しを向ける。彼にとっては当たり前のことなのか、女性たちの視線を気にしている様子は一切ない。むしろ、周りの女性になど目もくれず常に隣にいるアイリーンを気遣ってくれているのが伝わってくる。
こんな風に胸の中がモヤモヤしてしまうのは、ヤキモチを妬いているからだろう。
それは今もまだ、アイリーンが彼を愛している証拠に他ならない。
(わたし、やっぱりエドガー様のことが好きだわ)
例えエドガーがアイリーンを好きでなくても構わない。彼に言われた言葉に傷付いてうじうじと部屋にこもって泣き腫らしていても、何も解決しないとようやく気付いた。
エドガーだけでなく、侍女のシーナや執事のルシアンにまで心配をかけてしまっている。屋敷の使用人たちも姿を見せないアイリーンを案じているとシーナが教えてくれた。
心配をかけるのは本望ではない。これでは、失恋をしたからと言って二週間部屋の中に閉じこもって使用人たちにわがまま放題を言って困らせたソニアと同じだ。
アイリーンに求婚した本当の理由は、エドガーにしか分からない。
例えソニアの言葉が正しかったとしても、アイリーンのエドガーへの想いは変わらない。
彼が自分を好きでなくても、アイリーンはエドガーが好きだ。愛している。胸を張って言える。
だったら、努力をしようと考えた。彼に好きになってもらえるような女性になれるように自分を磨き上げようと心に決めた。
一通り食べ歩きを楽しんだ後、エドガーはアイリーンを近くの公園へ誘った。長いベンチに揃って座る。少し離れた場所からは軽快な音楽と人々の笑い声が聞こえてくる。
「ずいぶん歩き回ったな。疲れていないか?」
「平気です。今日はお誘いいただきありがとうございました。すごく楽しかったです」
「いや、礼には及ばない」
エドガーは小さく息を吐き、アイリーンに目を向けた。
「アイリーン。正直に教えてくれ。この間のガーデンパーティの後、様子がおかしかっただろう。あれは……」
「申し訳ありません。わたし……あのとき、エドガー様とソニアの会話を盗み聞きしました」
アイリーンはあの日のことを包み隠さず、正直にエドガーに話した。
「やっぱり聞いていたのだな……。あなたに聞かれる可能性があったのにあんな迂闊なことを……。悪いのは俺だ。だから、盗み聞きをしたなどと自分を責めないでくれ」
エドガーは険しい表情を浮かべた後、改まったように背筋を伸ばした。
「正直に言おう。気を悪くしたら申し訳ないが、俺はあなたの継母と義妹が嫌いだ。いや、大っ嫌いだ。言葉を交わすだけで虫唾が走るし、同じ空気を吸うことすらも極力避けたい。それほどの嫌悪感を抱いている」
「……え?」
エドガーの表情は真剣そのものだった。
こんな風に胸の中がモヤモヤしてしまうのは、ヤキモチを妬いているからだろう。
それは今もまだ、アイリーンが彼を愛している証拠に他ならない。
(わたし、やっぱりエドガー様のことが好きだわ)
例えエドガーがアイリーンを好きでなくても構わない。彼に言われた言葉に傷付いてうじうじと部屋にこもって泣き腫らしていても、何も解決しないとようやく気付いた。
エドガーだけでなく、侍女のシーナや執事のルシアンにまで心配をかけてしまっている。屋敷の使用人たちも姿を見せないアイリーンを案じているとシーナが教えてくれた。
心配をかけるのは本望ではない。これでは、失恋をしたからと言って二週間部屋の中に閉じこもって使用人たちにわがまま放題を言って困らせたソニアと同じだ。
アイリーンに求婚した本当の理由は、エドガーにしか分からない。
例えソニアの言葉が正しかったとしても、アイリーンのエドガーへの想いは変わらない。
彼が自分を好きでなくても、アイリーンはエドガーが好きだ。愛している。胸を張って言える。
だったら、努力をしようと考えた。彼に好きになってもらえるような女性になれるように自分を磨き上げようと心に決めた。
一通り食べ歩きを楽しんだ後、エドガーはアイリーンを近くの公園へ誘った。長いベンチに揃って座る。少し離れた場所からは軽快な音楽と人々の笑い声が聞こえてくる。
「ずいぶん歩き回ったな。疲れていないか?」
「平気です。今日はお誘いいただきありがとうございました。すごく楽しかったです」
「いや、礼には及ばない」
エドガーは小さく息を吐き、アイリーンに目を向けた。
「アイリーン。正直に教えてくれ。この間のガーデンパーティの後、様子がおかしかっただろう。あれは……」
「申し訳ありません。わたし……あのとき、エドガー様とソニアの会話を盗み聞きしました」
アイリーンはあの日のことを包み隠さず、正直にエドガーに話した。
「やっぱり聞いていたのだな……。あなたに聞かれる可能性があったのにあんな迂闊なことを……。悪いのは俺だ。だから、盗み聞きをしたなどと自分を責めないでくれ」
エドガーは険しい表情を浮かべた後、改まったように背筋を伸ばした。
「正直に言おう。気を悪くしたら申し訳ないが、俺はあなたの継母と義妹が嫌いだ。いや、大っ嫌いだ。言葉を交わすだけで虫唾が走るし、同じ空気を吸うことすらも極力避けたい。それほどの嫌悪感を抱いている」
「……え?」
エドガーの表情は真剣そのものだった。