【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
「でも、お父様は二度とソニアを呼ばないと約束してくれたわ。といっても、あなたの継母とソニアは罪人として裁かれ、爵位をはく奪されたし二度と会うことはないと思うけど」

オゼットは涼しい顔で言ってのけた。
あの後、二人は裁判にかけられた。数々の証拠が残されていたため、すぐに有罪となり爵位と領地をはく奪された。もちろん、アイリーン達を襲った男達四人にも重い裁きが下された。

主を失い屋敷に残された使用人たちはエドガーの計らいで家族と共にサンドリッチ領へやってきた。さらに仕事の斡旋を受け、クルムド家にいたときよりも条件の良い待遇でのびのびと楽しそうに働いている。今日の結婚式にももちろん参列し、心から祝福してくれた。

「それと、これに見覚えはない?」

 オゼットが取り出したのは、涙の粒のような形の翡翠色のイヤリングだった。

「これって……お母様が亡くなる直前までつけていたイヤリングよ。間違いないわ……!」

継母に奪われて売り払われ、二度と取り返すことはできないと諦めていたものだった。
驚いてオゼットを見る。

「どうしてこれをオゼットが?」
「わたしがこの屋敷へ来訪したとき、言っていたでしょ? 母親の形見すら全て取り上げられてしまったって。屋敷に戻ってから色々なルートをつたって調べたの。結果、あなたの継母が隣国の宝石商と懇意にしていたことが分かったのよ。ただ、売れられてからずいぶん時間が経ってしまっていたから、あの人が売りに来たもので取り戻せたのはそれだけだった。……ごめんなさい」
「そんな……謝らないで、オゼット。嬉しい……本当に嬉しいわ。ありがとう」

 奪われた母のイヤリングが再び手元に戻ってきた。その喜びが爆発して、アイリーンは目を潤ませながらオゼットに抱き着いた。

「ふふっ、まったく。可愛い子なんだから」

 同い年のオゼットはちょっぴり姉御風を吹かせて、ポンポンッとアイリーンの背中を叩いた。
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