もう一度、この愛に気づいてくれるなら
「エレーヌ」
「ゲルハルトさま」
二人は見つめ合う。やっと喉の調子も戻ったようだ。
「ゲルハルトさま、愛しています」
エレーヌはラクア語で言った。ゲルハルトは、少し首をかしげて感極まった顔を向けてきた。エレーヌの目の前に立ち、その涙を指ですくう。
ゲルハルトはエレーヌの頬をさも大切そうに撫でる。
その黒い双眸でまっすぐにエレーヌを捉えると、口にした。あの夜とそっくり同じ言葉を。
ゲルハルトは帝国語で言ってきた。
『エレーヌ、俺はあなたが憎い』
そう聞こえていたものは、全く逆の愛の告白だった。
「エレーヌ、俺はあなたを愛している」
エレーヌにはゲルハルトの意図がわかった。もう一度やり直すのだ。そして、あの夜を乗り越える。
「あなたにどう思われようと、俺はずっとあなたを愛している。心から愛している」
「私もあなたを愛しているわ。私が死んでもあなたが死んでも、わたしは、ずっとあなたのことを愛してい……」
エレーヌはゲルハルトに引き寄せられると、やはり言い終える前に唇を塞がれた。
キスを受けたあと、ゲルハルトは離れ難そうに唇を離した。そして、絨毯に膝をつき、エレーヌを見上げてきた。
「どうか、ずっと俺のそばにいて。俺のそばで笑っていてほしい」
ゲルハルトの目からも涙がこぼれていた。哀願するようなゲルハルトがエレーヌには愛おしくてたまらなかった。
再び、二人が愛を交わし合った瞬間だった。