もう一度、この愛に気づいてくれるなら
魔物、破れたり
ヴァロア公爵は処刑されたのは、エレーヌの王都帰還に先立つこと半月前だった。
王都の公爵邸から、ディミーや、それ以外の者を使って、エレーヌを、ひいてはゲルハルトを害そうとする物証が出てきた。
ヴァロア公爵の妻子らは、北方に追われ、家督はエディーが継ぐことになった。
ミレイユは、陰鬱な顔をしたままだった。やはり、夫は兄によって死に至らされたのだと、確信したようだった。
実行犯のディミーは本来ならば即座に処刑されるべきだったが、長く生かされていた。
(ディミーは、まず、エレーヌの裁きを受けなければいけない)
エレーヌが王都に帰還し、落ち着いたころ、ゲルハルトはエレーヌの前でディミーの名を口に出した。
「エレーヌ、ディミーに会う必要はある?」
エレーヌはおぼつかない顔になったが、しかし、すぐに毅然として、こくり、とうなづいた。