もう一度、この愛に気づいてくれるなら
エヴァンズもまたエレーヌの裁きを受けなければいけなかった。
「どうして、私に『愛する』と『憎む』を逆に教えたのですか」
エヴァンズの前に立つエレーヌは、若く美しく、その上、愛に包まれて光り輝いていた。
エヴァンズはエレーヌに、吐き気が込み上げるほどに憎しみを覚えた。
不幸になったはずのエレーヌがどうしてこれほど幸せそうにしているのか。
エヴァンズはそれでも取り繕って、悲しげな目をして、まるで愛しい教え子を見るような穏やかな顔つきでエレーヌを見た。
「王妃陛下、あなたは何か勘違いを……」
そこまで言ったところで、エレーヌの背後で、ゲルハルトの目が冷たくなっていくのに気付いた。兵士が、ジャリ、と、手にした鎖を鳴らした。
地下牢で痛めつけられているエヴァンズはもうそれ以上声が出なくなった。
エレーヌはディミーに対するのと同じことを言った。
「私は人をもてあそぶ魔物に勝ちました。もう魔物の意地悪は効かないのです」
ディミーに響いたその言葉は、エヴァンズには理解できないようだった。エヴァンズには自分のしていることが人の心をもてあそぶことだとの自覚がなかった。