もう一度、この愛に気づいてくれるなら
大聖堂に鐘の音が響き渡る。花嫁の隣に並び立ち、祝福する人々に向けて手を振るのは花婿。花婿は全裸だった――。
(きゃあああっ)
夜中にエレーヌはそんな夢を見て飛び起きた。
(そういえば、あの男も黒目黒髪だったわ……)
エレーヌはミレイユの《乱暴者》の台詞を思い出した。
(も、もしかして、あの人が私の夫なの……? 違うわよね? ち、違うわよね? 今ごろあの人は牢屋のはず)
エレーヌはもう一度横になった。
(せめて、ちゃんと服を着ている人でありますように)