もう一度、この愛に気づいてくれるなら
それから、エレーナはほとんどの時間を刺繍をして、ときおり外を眺めて暮らした。

ひとりきりなのは、塔で過ごしていたころも同じだったが、外の世界を知ってしまえば、自分だけが隔絶されているようで、ときおり苦しくなった。

そんな日々にも、ゲルハルトからの贈り物が毎日届き、次第にそれはエレーヌの慰めになっていった。

エレーヌは刺繍をした布で、ハンカチを拵えた。

一枚は三色のピンクの糸でバラの花が入ったもので、もう一枚は窓から見える旗に描かれた紋章を入れてみた。

花模様のものをハンナに渡すと、ハンナはまさか自分にくれるものとは思ってもみなかったようで、目に涙を浮かばせて喜んだ。

「エレーヌさま、####、####」

(ありがとう、って言っているのね?)

「ハンナ、いつも、アリガトウ」

エレーヌも言い返すとハンナはぎゅっとエレーヌの手を握ってきた。

「エレーヌさま、アリガトウ、####!」

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