もう一度、この愛に気づいてくれるなら
惨めな晩餐会
ゲルハルトなのか、ハンナの兄なのかよくわからないが、贈り物は毎日続いていた。

花やお菓子であることが多かったが、あるときは筒のようなものが贈られて、レンズがついていることから望遠鏡だとわかった。

エレーヌは本の挿絵を思い出した。

(王様がこれで外を見ていたわ)

エレーヌはバルコニーから外を眺めてみた。川の向こうでひしめき合っている建物は、市場だとわかった。

目線を下ろすと、庭を手入れする職人や、渡り廊下を行き交う侍女の表情まで見えた。

(面白いわ)

贈り物のおかげでエレーヌの寂しい暮らしは少しだけ豊かになったが、肝心の「ラクア語の教師」も「本」も与えられることはなかった。

ゲルハルトは、悪意をもってエレーヌを部屋の中に一人で閉じ込めているのかもしれなかった。


< 24 / 107 >

この作品をシェア

pagetop