もう一度、この愛に気づいてくれるなら
エレーヌとゲルハルトは、陽光がすっかり高くなってから寝室から出てきた。そのときには、ゲルハルトはエレーヌを抱きかかえており、エレーヌはゲルハルトの首に腕を絡ませていた。そして、見つめ合っている。
二人の醸し出す空気はそれまでのものとは全く異なっており、親密さにあふれている。
ハンナはそんな二人を見て、小さく叫んだ。
「エレーヌさま! ゲルハルトさま!」
ハンナは飛び上がって両手を胸の前で合わせた。そして、目に涙をじんわりと浮かべる。
あからさまなハンナの喜びように、エレーヌは自分自身の心情を表現されているようで、恥ずかしくなった。
(ハンナったら、泣くことないじゃないの。私も泣いてしまうわ)
エレーヌはゲルハルトの首をギュッと抱きしめて、肩に顔をうずめて涙を隠した。
ただ一人、ディミーは恨めしそうな顔をしていたが、誰もそれに気づくことはなかった。