もう一度、この愛に気づいてくれるなら
シュタイン城にやってきて一週間ほど経った朝、エレーヌはドレスのサイズがちょうど良くなっていることにふと気づいた。

(私、太ったのかしら……?)

しかし、シュタイン城に来てより、むしろ食は細っているために、それはないに違いなかった。

衣装部屋を見ると、前に見たときとは、中身が入れ替わっているように感じた。赤毛を引き立てる色味の鮮やかなものが減り、白や水色や薄紫など、エレーヌの金髪に紫の目の色を引き立てるような寒色系の色味のものが増えていると感じた。

鏡台の引き出しを開けてみれば、中のものがごっそりなくなっていた。その代わり、新しいリボンや髪留めに櫛が入っていた。

チェストの引き出しからも、この部屋の主だった令嬢のものはすっかり無くなっていた。

令嬢の肖像画のあった場所を見れば、肖像画は外されていた。

(シュタイン夫妻は、私を養女にでもしてくれるつもりなのかしら。義理堅く、本当に親切な方たちなんだわ)

ディミーのことがあっても、まだ人を疑うことを知らないエレーヌは、そう思うだけだった。

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