そっと、ぎゅっと抱きしめて
そして、ある日の土曜日。
わたしは家の近くのコンビニまで伊吹さんに迎えに来てもらった。
家の前まで来てもらうと、母の目がある為、控えてもらったのだ。
「こんにちは。」
わたしの姿を見つけると、車から降りてきて挨拶をしてくれる伊吹さん。
「こんにちは。すみません、わざわざ家の近くまで迎えに来ていただいて。」
「誘ったのは俺の方ですから!迎えに来るのは当たり前ですよ!まぁ、しずくさんから誘っていただいても、迎えに来ますけどね。」
そう言い、笑う伊吹さんは、「どうぞ!」と助手席のドアを開けてくれた。
「あ、ありがとうございます。」
わたしは失礼ながら、伊吹さんの車の助手席に乗せていただいた。
座り心地が良いシート。
高そうな車だなぁ。
わたしは、そう思いながらシートベルトを締めた。
伊吹さんは運転席に乗り込むと、「じゃあ、出発しますよ。」と言い、車を出した。
車内には、小さめの音量で米津◯師の「アイネク◯イネ」が流れていた。
「あ、アイネク◯イネですね。」
わたしがそう言うと、伊吹さんは「あ、分かりました?俺、米津◯師さんの曲好きなんですよね。」と言った。
「わたしも好きです。初期の頃からのCD持ってます。」
「俺も!ゴーゴー幽◯船とか分かります?」
「分かります!わたし、あの曲好きなんですよね。」
「何か、俺ら音楽の趣味合いますね。」
そんな会話をしながら、わたしたちは静かに走る伊吹さんの車でアトリエに向かった。