そっと、ぎゅっと抱きしめて
デッサンで描かれた女性の横顔に驚いていると、伊吹さんから返信がきた。
{ もちろん、来ていただいて構いませんよ。)
( でも、あの女性のマネージャーさん?に反対されませんか?}
{ あぁ、峯岸さんですね。峯岸さんはアトリエ立ち入り禁止なので大丈夫です。)
峯岸さんは、アトリエ立ち入り禁止?
それなら、この峯岸さんの絵はどこで描いたんだろう。
そう思いながらもわたしは伊吹さんのアトリエにお邪魔する約束をし、「おやすみなさい。」とLINEを終えたのだった。
わたしは伊吹さんとのLINEを終えたあとでも、ネットに載っている伊吹さんの作品やプロフィールを見ていた。
伊吹さんって、38歳なんだ。
もう少し若いのかと思ってた。
わたしは、絵を描いている伊吹さんの姿が撮られた写真を見て、伊吹さんってこんな表情で絵を描いてるんだなぁ、としばらくその写真を見つめていた。
気さくに話し掛けてくれた時のあの表情とは違い、真っ直ぐで真剣なその瞳にわたしは惹かれていた。
わたしはその夜、伊吹さんのアトリエに行ける楽しみと、伊吹さんの絵を描いている時の瞳が頭から離れず、なかなか眠りにつくことが出来なかった。