虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~
「よおうこそぉ!!ルプス帝国へ!!クラリス王女!!!」
「…………へ???」
ゼウラウス国王は大きく手を広げてこちらにやってきた。
そうしてそのまま私を抱きしめると、優しくぎゅっとしてくれた。
事態ののみ込めない私は、ただただポカンとするばかり。
「もうっ!貴方、ずるいじゃないのぉ!私もぎゅっとさせて!」
ミラ王妃もぱたぱたとやってきて、私にぎゅっとハグをする。
そこに慌てたようにリビアが割って入る。
「国王様!王妃様!クラリス様が戸惑っていらっしゃいます!まずはスキンシップなしでご挨拶を!」
リビアの言葉に、ゼウラウス国王とミラ王妃は楽しそうに笑う。
「はっはっは!そうだったそうだった!いかんいかん。驚かせたなぁ!」
快活に笑うゼウラウス国王に、「やだぁ!クラリスちゃんが可愛くてつい!」とミラ王妃も笑っている。
「???????」
一方私の頭の中ははてなマークでいっぱいである。
これはいったいなに?どういう状況なの……?
「いやあ久しぶりだな、クラリス王女。幼少期に一度会ってからはご無沙汰だった」
「小さい頃から可愛かったけれど、こんなに綺麗になっているなんて!」
「レオもようやくクラリス王女に会えて喜んでおるわい」
そうゼウラウス国王に言われて、咄嗟にレオナルド殿下の顔を見るけれど、相変わらず私を睨みつけるように鋭い視線を向けていた。
いやどう見ても全然喜んでない……!!
国王と王妃は嬉しそうに笑う。
事態がまったくのみ込めない。
ごほん、と慌ててそれらしく咳払いをしたゼウラウス国王は、ゆっくりと話し出す。
「クラリス王女、長旅ご苦労であった。アレス国からは遠かったであろう」
「あ、い、いえ…」
「先の交渉により、我が国へと嫁ぐ決意をしてくれたこと、大いに感謝している」
「え?はぁ…」
「レオナルドはシャイでな。なかなか結婚相手も見つからず、やきもきしていたのだ。そんな折、クラリス王女が来てくれるとサビウスから聞いて、ルプス一同楽しみにしていたのだ」
「たの、しみ……?」
なんだか我が国での情報とは違うように思う。
「お、恐れながら、申し上げます…」
私が恐る恐る口を開くと、「おお、なんだ。申してみよ」とゼウラウス国王は寛大に私の言葉を聞いてくれる姿勢をとった。