虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~

 未だに信じられない気持ちを抱えながらも、リビアに自室を案内された。

 私が生まれ育ったアレスの城の自室よりも、綺麗で広い部屋だった。


「クラリス様。こちらがお部屋になります。本日はお疲れだと思いますので、お食事はこちらに運ばせていただきますね」
「あ、ありがとう…ございます…」


 リビアはほんわかとした雰囲気ながらも、てきぱきと私の身の回りの世話をしてくれた。

 こんな風に誰かに世話をしてもらうなんて、いつぶりだろう。

 小さい頃は私付きの侍女もいたように思ったけれど、お義母様やお姉様方がやってきてからは、一人でなんでもやらなくてはいけなかったし、なんなら私が侍女扱いだったのだ。

 なんだか贅沢すぎる気がして、物凄く気が引けると言うか…。

 今の自分の身の丈に合わない生活が始まってしまったような気がして、どうにも落ち着かない。


「湯を張りましたので、お先に入られますか?」
「え?ええ…」


 リビアに案内され、自室に備え付けられているバスルームへと足を踏み入れる。


「クラリス様、お背中お流ししますね」
「えっ!いえいえけ、結構です!自分でできますっ!」


 私の身体を洗う気満々だったリビアは、「あら、遠慮なさるなんて、クラリス様って本当に謙虚なんですね」と笑っている。

 そうじゃないの…、少し一人でゆっくり考えさせてほしいだけなの…。

 「いつでもお呼びくださいね」と微笑むリビアに、引き攣った笑顔を向けながらも、私はようやく一人の時間を手に入れた。


「はーっ……」


 温かな湯船に浸かり、私は大きく伸びをした。

 これは、本当のことなのかしら…。

 未だにその疑念が尽きない。

 酷い扱いをされるものと覚悟してやってきたわけだけれど、それどころか、自国でもされたことのないくらいに手厚く扱われている。

 普通の国の王女って、こんな風に扱われるものなのかしら?

 私にはまったく分からない。

 王族でありながら、侍女のように扱われてきた私には、王女のいろはすら分からなかった。

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