虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~

「うう…頭痛い……」


 あれから一睡もできずに朝を迎えた。

 当然だ。覚悟してはいたけれど、死は怖い。悠長に眠れるはずがなかった。


「そうだ…、朝食の支度をしなくては……」


 私は適当に身支度を整え、部屋を出る。

 しかしそこで困り果ててしまった。

 あれ?そういえば厨房はどこにあるのかしら?

 昨日はリビアが部屋にご飯を運んでくれたため、どこで作っているのか分からない。


 そこにちょうど、リビアがやってきた。


「クラリス様!もうお目覚めでしたか!遅くなってすみません!」
「あ、いえ…」


 慌ててこちらにやってくるリビアに、重い頭を抑えながら私は問い掛けた。


「あの、厨房はどこにあるのでしょうか?朝の支度をしなくては…」


 私の言葉に、きょとんと可愛らしいお顔を傾げるリビア。それからすぐに笑顔になる。


「クラリス様、何を仰っているのですか!そのようなことは私共の仕事です。クラリス様はゆっくりなさってくださいまし!」

 「さあさあ!」と部屋に押し戻され、私はベッドに腰掛ける。


 そうだった。私はもう、朝食の支度をすることはないのだった。

 アレスにいるときの癖でつい早起きをし、厨房に向かおうとしてしまった。

 今日殺されるかもしれないのに、なんて呑気なことだろうか。

 寝不足とそれによる頭痛に加え、人生が今日で終わるかもしれないという恐怖から、上手く頭が回っていないようだった。

 私の髪や服を整えてくれていたリビアが、私の顔を心配そうに覗き込む。


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