虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~

「クラリス様?大丈夫ですか?」

「…?」

「少々顔色が悪いように思います。昨日の疲れがまだとれていらっしゃらないのではないでしょうか?」

 疲れが取れていないどころか、体調も悪ければ気分も最悪である。けれど。


「大丈夫です…、今日は、殿下とお約束がありますので…」


 そう言うとリビアはにんまりと笑顔を浮かべる。

「そうでしたか!でしたら今日は特別可愛くして差し上げねば!」


 リビアは腕を捲り、嬉々として私の化粧を始める。


「クラリス様はもともとかなり美人様でございますので、それほどいじる必要もございませんが、ちょっとだけお色入れますね」


 美人?私が?

 ぼーっとした頭のなか、聞こえてきた単語に首を傾げる。

 美人だなんて、リビアはとても優しい子だわ。

 私が死ぬまでのほんの短い付き合いであるとしても、私の気分を上げるような優しい言葉ばかりをくれる。

 私が美人だなんて、そんなはずがあるわけないというのに。


「さ!できましたよ」


 鏡に映る私は、私でないみたいに綺麗だった。

 こんなに素敵にしてもらったことは、人生で一度もない。


「ありがとう…、リビア」

「とんでもないです!クラリス様はもともとがお綺麗ですから」

 「でも本日は無理はなさらないでくださいよ!やっぱり顔色があまりよろしくはないですから」とリビアはお母さんのようなことを言ってくれた。


 私は苦笑いを零しながらも、「分かりました」と返事をした。


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