虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~
この国に来てから、優しい人達ばかり。
余所から来た私なんかに、みんな優しくしてくれる。
そんなことってあるのだろうか?
自国でも愛されなかった私が、ルプス帝国になんの利益ももたらしていない私なんかが、どうして大切にされるというのか。
レオナルド殿下が静かに口を開く。
「君がどうしてそのような卑屈な考えばかりしてしまうのかは分からないが…。先程も言った通り、私は君を妻に迎えたいと思っている」
「…っ、でも、」
「父の言った通りなのだ」
「え…?」
レオナルド殿下の氷のような表情が、少し溶けたような気がした。
殿下は私から少し視線を背けると、ぽつりぽつりと話し出す。
「君が私の妻となる日を、ずっと待ちわびていた」
私は思わず眉間に皺を寄せる。
そんなわけ…。
「そんなはずがないと思っているか?」
まるで心を読まれたようにそう言われて、私の身体がびくっと跳ねた。
「君は憶えていないのだろうな…。あれは、まだ五歳の頃だ」
そうレオナルド殿下が話し出したのは、遠い日の思い出だった。