虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~
3章 旦那様の様子がおかしい。これはいよいよ戦争か?
レオナルド殿下が言うには、私と殿下は幼少の頃に一度会ったことがあるらしい。
そういえばそのようなことを、ゼウラウス国王も仰っていたかもしれない。
当時八歳だったレオナルド殿下に対して、私は五歳。
とある近隣諸国の会合を兼ねたパーティーでのことだった。
そこには隣国のお偉い様方のご子息や時期国王となる継承者達がいて、私もその中の一人だった。
甘い物が大好きなレオナルド殿下は、用意されていたスイーツを片っ端から食べていた。
それを見ていた近隣諸国の子供たちは、「うわっ!男のくせにあいつ甘い物ばっかり食べてるぞ!」「社交の場でご飯に夢中だなんて、ルプスの将来が不安だわぁ」などと、馬鹿にされたそうなのだ。
悔しく思いながらも、当時のレオナルド殿下は強く言い返すことも出来ず、ただ俯くしかなかった。
そこに割って入ってきたのが、私、当時はアレス国の第一王女であった、クラリス・フォートレットだった。
その時の私はどうやら、こんなことを言ったらしい。
「わぁ!!そのスイーツ!とっても美味しそうっ!私にも頂戴!」
「うっわ!またスイーツ馬鹿が増えたよ、アレスもルプスも、将来滅んでるんじゃねえ?」
ぎゃはははと笑う数人の子供達に、私はまったく怯むことなくこう言った。
「どうして用意してもらったご飯を食べてはいけないの?これは、大国セシウスが用意してくれたものでしょう?あっちは小国だけれど、自然豊かな中立国アリアが用意してくれたもの。どのテーブルもその国の特産物を使った、その国独自の郷土料理が並んでる。私達子供が他国を理解するのに、その国のご飯を食べるのが手っ取り早いと思わない?このフルーツがたくさん使われているから、温暖な気候なんだろうな、とか、凝った料理が多いから食に力を入れていて、手先が器用な人が多いんだろうな、とか。社交も大事だけれど、私達子供にとっては、そういう小さなことから国を理解することも大事なんじゃないの?」
私の言葉に、そこにいた子供達は黙り込んでしまったらしい。
それを横目に、料理を取り分ける私。
「あ、あの、ありがとう…」
レオナルド殿下は、自分よりも小さな私が言い返していたことに、心底驚いたらしい。
「ん?なにが?私はただ、この国のスイーツが食べたかっただけだよ!」