虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~

 リビアは私の言葉に驚いて目を丸くしている。


「クラリス様、よくお聞きくださいませ」


 ずいっと近付いてきたリビアは、声を潜めるように私に耳打ちする。


「レオナルド様は、クラリス様のことが大好きでございます」

「いや、でもそれは、」

「私は昨晩見てしまったのです」

「え?」


 見た?何を?


「レオナルド様がクラリス様に、愛おしそうにキスをするのを…!」

「きっ…キス!?!?」


 ぼんっと音でもするのではないかと言うくらいに、身体中の体温が一気に高くなった気がする。


「き、き、キ……っ!?!?」


 お猿さんのようにキキっしか発音できなくなってしまった私に、リビアはにまにまと笑う。

 そうしてリビアは手近な机に置かれていたハンドベルを無造作に鳴らした。



 リリリリン!!!!!



 部屋中はおろか、城中に響き渡るかのような大きな音だった。

 私は慌てて耳を抑える。


「りっ、リビア!?これは一体…」

 一体何事?そう訊こうとしている間に、遠くから慌てたような足音が近付いて来る。


「クラリス!無事か!?」


 バンっと扉が大きな音を立てて開き、慌てたように息を切らしたレオナルド殿下が入ってきた。


「で、でで殿下っ!?!?」

「何事だ!?」

「いやそれはこっちのセリフなのですがっ!?」

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