虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~

「どうした?また体調が?」


 私が黙り込んで俯いてしまったのを勘違いした殿下は、私の顔色を窺おうと近付いてきた。

 そのあまりの近さに驚いてしまった私は、「だ、大丈夫ですっ!」とレオナルド殿下の胸を押し返そうとして、その手を握られてしまった。


「で、殿下…っ」

「クラリス、リビアの話は本当か?」

「え…?」

「私の愛が信じられないか?」

「……っ」


 信じられない…のかな。

 騙されているのではないか、と未だに思う。

 こんなことが本当に、私なんかの身に起きていいのかって、そう思ってしまう。


 ずっと、願っていた。

 私を愛してくれる誰かがいて、ただただ穏やかに暮らせる日々を。

 もしかしたらそれが、もう目の前に来ているかもしれないのに、ネガティブな私は、それを素直に受け取ることができない。



 言葉に詰まった私をどう思ったのか、レオナルド殿下は私の手の甲に優しくキスを落とす。


「…!?」

「今はまだ、信じてもらえないかもしれない。けれどこれから少しずつ、私の気持ちを伝えていくつもりだ。クラリスがいつか、自信を持って私の隣に立てるようになるまで」

「…殿下…」


 レオナルド殿下は私の頬に優しく触れる。

 殿下の氷のような瞳に吸い寄せられて、目が離せなくなる。


 気付けば互いの唇が重なり合っていて、私はその温かさに身を委ねていた。


 この人のことがもっと知りたい。

 そう強く思った。


 レオナルド殿下と接していくうちに、根深くなってしまったこのネガティブな思考も、少しは明るい方へと向かってくれるのだろうか。

 私なんかが、未来に希望を持ってもいいのだろうか。





 ネガティブな私がポジティブになるまでは、まだまだ時間が掛かりそうだった。



終わり



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