虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~

 また別の日。お姉様達に言われたように、厨房でお菓子を作っていると、お義母様が驚いたようにやってきた。


「クラリス?」
「お義母様…」


 何を言ってくれるのかと思ったけれど、お義母様の口から出たのは、彼女らしい言葉だった。


「貴方が料理しているの?まぁなんてぴったりなのかしら!そのぼろぼろのエプロンもよく似合うわ!貴方は王女というより、侍女って感じですものねえ!」


 綺麗に笑っているような表情を作っていながらも、目だけは決して笑っておらず、心底不快そうに思っているのが分かった。

 私は幼心に悟った。

 この人達の為になにかしてあげたいと思うなんて、馬鹿馬鹿しいことだったのだと。

 彼女達は、私なんか家族だと思ったこともなく、あまつさえいなくなってほしいのだと。



 そんな三人は、お父様に媚びを売っては欲しい物を買ってもらい、勉学は私に押し付け、あまつさえご飯すらも侍女の作ったものよりもマシだからと、私に作らせるようになった。

 お父様はそんな風に扱われている私を見ていたはずなのに、何も言ってくれることはなかった。

 大好きだったお父様は、お母様が亡くなった時にいなくなってしまったんだ…。

 もちろん落ち込んだし、悲しかった。


 一人で過ごすことの多くなった私は、どんどんと卑屈になり、気付けばネガティブな思考に捕らわれるようになった。

 どうせ私なんかが頑張ったところで、お義母様もお姉様方も優しくなったりなんてしない。

 私が勉強も出来て、情勢に詳しかったところで、この国を動かせるわけでもない。

 今日も嫌なことを言われるに違いない。

 私はこれから先も誰にも認められないんだ。



 そんな風に虐げられながらネガティブに生きているうち、私は十七歳になっていた。



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