虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~
お父様は重々しく口を開く。
「ゼウラウスのやつ、我が国の資源を寄越すように言ってきたのだ」
ゼウラウス・サイラス。
軍事国家ルプス帝国の国王である。
前述したように、アレス国は鉱脈に恵まれており金銀銅の含まれる鉱物の採掘はもちろん、鉱床も多い。
どの国も欲しい資源だろう。今まで狙われていなかったのが不思議なくらいだ。
今までも国外に輸出などはしていたはずだから、その量で揉めた、ということなのだろうか?
「あれは幼少の頃から頑固でな」
そうだった。お父様とルプス国国王、ゼウラウス様は幼馴染みだと聞いたことがある。
だからこそ小さな国であるアレス国は他国から狙われることがなかったのだ。
アレス国の後ろには、ルプス国がいると思われていたから。
しかし続くお父様の言葉に、城内の誰もがぽかんと大きく口を開けることになる。
「売り言葉に買い言葉というやつだ」
「…………………。」
アレス国国王の一言に、誰もがぽかんとした。
長いと感じる沈黙を破ったのは、やはりクリスティーナお義母様だった。
「……え?売り言葉に買い言葉で、ルプスと戦争をすると言うの…?」
「そうだ、こちらも譲るわけにはいかん」
「「お父様!!考え直して!!!」」
お姉様二人の言葉が重なった。
そんなくだらない理由で国ごと巻き込んで戦争だなんて、信じられない。
小さなアレス国なんて、あっという間に攻め入られて支配下に置かれて終わりだ。無益な戦いすぎる。
「しかし…」
尚も食い下がるお父様に対して、お義母様とお姉様は必死に説得を試みた。
なんとかお父様を妥協させるべく、さまざまな案を提案してみたものの、お父様は「何故私が妥協せねばならんのだ」の一点張りだった。
お父様は昔から頑固で意地っ張りなところがある。
もしかしたらこのまま本当に戦争が始まっちゃうのかもなぁ、なんて半ば投げやりに思っていると、「そうだわ!」とクリスティーナお義母様が声を上げた。
「クラリスを差し出しましょう!!」
「………へ???」