虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~

 蚊帳の外だった自分の名前が突然呼ばれ、私はきょとんとするしかなかった。

 勉強は不得意のはずのお姉様達まで、お義母様の言いたいことがわかったみたいに、にんまりと口角を上げる。

 クリスティーナお義母様は、お父様に向かってこう説明する。


「確か、ルプスの第一王子は、お妃様をお探しでいらしたわよね?クラリスを材料に交渉しましょう!」


 私の意見などまったく聞くことなく、とんとん拍子で話が進んでいく。

 お父様やお義母様、その他アレスのお偉いさん方が集まって会議を開く。

 お義母様がこんなにも必死に国の政治に関わるところを見るのは、これが初めてだった。

 それはそうだろう。戦争など始まってしまったら、贅沢な生活はおろか王位も危い。

 この国が支配下に置かれるかもしれないのだから。



 あれよあれよという間に、私は敵国ルプス帝国の第一王子に嫁ぐことが決まった。

 ルプス側もそれでこの争いを収めようと、合意したみたいだった。


 まさか私なんかが嫁ぐことで解決するとは思わなかったな…。


 嫁ぐ、というとおめでたいように聞こえるけれど、端的に言えば、私はアレス国を追い出されるのだ。

 お義母様もお姉様方も、それはもう嬉しそうにしていた。

 戦争はなくなり、邪魔者である私もいなくなるのだから、三人にとってこれほど嬉しいことはないだろう。

 私はただただ、自分の行く先を受け入れるしかなかった。

 足掻いたところで現状が良くなるとも思えない。

 何も力を持たない私なんかでは、自分の未来さえも変えることはできないのだと、また思い知らされただけだった。


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