恋するソクラテス
初めての長旅だった。
そして、初めての一人旅だった。
僕は荷物検査を終え、放送の指示に従い、機内へ移動する。受付でチケットを見せ係員がバーコードをかざす。
ピっと音がなり僕は前に進み機内に入る。自分の席をチケットで確認しながら僕は、窓側の席に座った。
荷物を床に置き、ひと段落すると、僕は自分のリュックサックから、昨日描いた絵を取り出した。
なかなかの出来栄えだと、心の中で自画自賛する。
人生、本当に何があるかわからない、と改めて思った。「だから面白い!」と彼女は言いそうだ。
機内放送で、そろそろ離陸することが伝えられた。
隣にも人が座り、僕は少しリュックサックをずらす。
シートベルトを着用するよう言われたので、僕は絵を傷つかないよう気を付けながらリュックサックにしまい、シートベルトをしめた。
やがて、機内は動き始める。
少し巡回し、離陸ポイントへ移動する。機体は一瞬止まり、助走のため先ほどより早いスピードで動き出す。背もたれに体が押し付けられ、機体は一気に上昇した。
機体が安定し、シートベルトをはずしても良いとなったので、耳がキーンとなりながら、僕はシートベルトをはずした。
窓際の席をとって正解だった。
外の景色を眺める。まだ上昇途中の様でイタリアの海や街並みが一望できた。
それはすごく綺麗だった。
フライトは十四時間。
やることがないので、僕は外を眺めながら、彼女との思い出を思い返すことにした。
幸い、時間はたっぷりとあった。
あれは、いつだったか、僕の名前が咲く頃だったような気がする。
淡い記憶を辿りながら、彼女との出会いから思い返した。
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