恋するソクラテス
僕は、ひとしきり、文字通り、涙が枯れるまで泣いた。
ようやく僕は顔を上げた。きっと目は赤く腫れ、鼻水は垂れ流れて、人に見せるような顔はしていなかったと思う。
それでも、彼女のお母さんは優しく微笑んで、桃色のハンカチを渡してくれた。
涙と鼻水を拭きとると、かすかに彼女の匂いが残っていて、また涙がこぼれた。
「しおんのために、そこまで泣いてくれてありがとうね。きっと、しおんも喜んでいると思うわ。ありがとう。ありがとう・・・・」
お母さんもまた、涙を流した。
僕はハンカチを洗って返すと言ったが、持っていてほしいと言われたので、ありがたく彼女のハンカチを受け取った。
玄関まで何とか歩き、靴を履く。
「また来てちょうだい」
「はい、また伺わせていただきます。いろいろが迷惑をおかけてして申し訳ございません」
僕は、玄関の扉を開けて、外に出る。
雨は上がり、雲の隙間からお日様が顔を出していた。
ありがとう。頑張るよ。そしてさようなら。
< 14 / 15 >

この作品をシェア

pagetop