魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
アリーセは小さくうなり声を上げて目を覚ます。ずきりと頭に痛みが走った。反射的に頭を押さえようとして、手が自由にならないことに気づく。
木製の背もたれがある椅子に座らされている。
後ろ手に縛られているうえ、魔法を警戒したのか猿ぐつわまではめられていた。特に椅子に縛り付けられているわけではないのは、幸い、なのだろうか。
(ここは……)
どこかの屋敷の一室だろうか。物置小屋のような場所だ。高い位置にある窓から見える空はまだ明るい。
最後の記憶は、アリーセを奴隷商人に売った男の顔だ。まだ昼前だったから、そんなに時間は過ぎていないのかもしれない。
(どうして王宮にあの男が?)
思い返せば、いつも掃除をしているのは女性だった。使用人を装ってアリーセが一人になるのを待っていたのだろう。
もっと慎重になるべきだった。後悔しても遅い。
(レナール様、心配している、よね)
レナールに迷惑をかけたくはなかったのに、結局はこうなってしまった。
一人反省会を開いていると、扉ががちゃりと開く。
「目を覚ましたのね。魔女」
部屋に入ってきたのはミンディだった。隣には侍女らしき女性もいる。ミンディの豪奢な薄緑色のドレスは、この物置小屋のような場所に非常に浮いていた。
ミンディはつかつかつかとアリーセに寄ってくると、ばしん、といきなりアリーセの頬をぶつ。突然のことで歯を食いしばることもできなかったアリーセは、頬の内側をかんでしまったようで、血の味がした。
木製の背もたれがある椅子に座らされている。
後ろ手に縛られているうえ、魔法を警戒したのか猿ぐつわまではめられていた。特に椅子に縛り付けられているわけではないのは、幸い、なのだろうか。
(ここは……)
どこかの屋敷の一室だろうか。物置小屋のような場所だ。高い位置にある窓から見える空はまだ明るい。
最後の記憶は、アリーセを奴隷商人に売った男の顔だ。まだ昼前だったから、そんなに時間は過ぎていないのかもしれない。
(どうして王宮にあの男が?)
思い返せば、いつも掃除をしているのは女性だった。使用人を装ってアリーセが一人になるのを待っていたのだろう。
もっと慎重になるべきだった。後悔しても遅い。
(レナール様、心配している、よね)
レナールに迷惑をかけたくはなかったのに、結局はこうなってしまった。
一人反省会を開いていると、扉ががちゃりと開く。
「目を覚ましたのね。魔女」
部屋に入ってきたのはミンディだった。隣には侍女らしき女性もいる。ミンディの豪奢な薄緑色のドレスは、この物置小屋のような場所に非常に浮いていた。
ミンディはつかつかつかとアリーセに寄ってくると、ばしん、といきなりアリーセの頬をぶつ。突然のことで歯を食いしばることもできなかったアリーセは、頬の内側をかんでしまったようで、血の味がした。