魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
「わたくしは真実を言っただけなのに、あなたのせいで謹慎することになってしまったじゃない。でもまあいいわ。あなたを渡せばすべて水に流してくださるということだもの」

 ミンディはアリーセをぶったばかりの手をひらひらと揺らす。

(私を渡す? 誰に?)

 声を発していたらアリーセは迷いなく問いかけていただろう。
 しかし、実際はうめき声の一つもあげることは出来ない。

「しばらくここにいなさい。迎えが来るから。あなたのような魔女でも、ラウフェンのために生きられるのですって。よかったわね」

(ラウフェンのために……?)

 アリーセの脳裏に去来するのは贖罪。
 祈りを捧げていた水晶玉は確かにロストだった。増幅の効果しかわからなかったけれど、やはり他にも効果があるのだろう。例えば豊穣のような。
 たぶん、監視者たちはアリーセのことを諦めていなかったのだ。

(ジギワルド様の他にも監視者はいた)

 そして、ジギワルドは監視者の中では異質だった。ジギワルドの考えが監視者の総意ではない可能性の方が高い。
 ジギワルドではない何者かがミンディをそそのかした……?
 どうやらミンディはアリーセに文句を言いたかっただけのようだ。
 アリーセを叩いたらすっきりしたようで、機嫌よく部屋を出て行く。

「うふふ。これでようやくジギワルド様と婚約できるわ」
「……」

 アリーセは部屋の中に一人取り残された。
 これから、どうなるのだろう。叩かれた場所がひりひりと痛む。

< 103 / 147 >

この作品をシェア

pagetop