魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
 ブラッツが部屋を訪ねてきたのは午後のことだった。後ろにはフィンも控えている。思ったより早いタイミングに、二人で部屋を片付けていたアリーセたちは慌てた。

「少し時間が出来たのと、君たちにも報告するべきことがあってな」

 それからブラッツはロストの前に立っているアリーセの方を見た。

「アリーセ嬢。気分はどうだ?」
「おかげさまで、大丈夫です」
「それはよかった。あまり無理はしないでほしい」

 こくりとうなずく。
 それから、レナールがまとめたばかりの報告書を手に取ってブラッツに渡した。

「殿下。これがこのロストの報告書です。一応使おうと思えば使えますが、本格的な運用を考えるのであれば、定期的なメンテナンスが必要になるでしょう」
「ありがとう。メンテナンスについても詳しい話を聞かせてもらえるか」
「もちろんです」

 それから、レナールがロストの前に立ち、簡単な使い方の説明をする。
 起動はデュラックのものと同じだった。

「実際に起動はさせていません。どのような効果が起きるかわかりませんから」

 起動して万一魔法だとわかる現象が起きてしまった場合、王宮は大騒ぎになるだろう。

「ああ。私も賛成だ。まだ実際に使うのは早いだろう。このロストについては、有用な使い方を検討する」

 ブラッツも納得してくれた。
 それから、話は昨日のことに移った。

「あの男はクンケル侯爵家お抱えの何でも屋だったみたいだ。令嬢が勝手に使っていた、というところだな。数日前から王宮に侵入して機会をうかがっていたそうだ」

 感じていた視線はそれだったのだな、とアリーセは思った。
 男は意外と大人しく供述をしているそうで、クンケル侯爵家の闇にまでメスが入ることは確実らしい。今頃クンケル侯爵は真っ青だろうな、とブラッツは面白がるように述べた。

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