魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
出迎えてくれたのは、ブラッツだった。
しかし、アリーセはそれどころではなかった。
(ここは……)
小さな夜会ができそうなくらいの広さの部屋。ただきらびやかな装飾は一切なく、ひたすらに無機質だ。石で出来た壁と床。そこには、三つほどの長方形の石――ロストが並んでいた。今まで見たどのロストよりも大きいそれらは、魔法回路がむき出しになっている。光を失っているのは、魔力がたまっていないからだろう。
「ロスト……」
(これが、ジギワルド様が言っていたロストだわ)
「ああ。その通り、ラウフェンで現役で稼働しているロストだ」
「豊穣のロストということですか?」
「そうだ。やはり気づいていたか。我が国の要でもある」
「どうしてそれを私に見せたんですか?」
アリーセはこれからピリエに戻るのだ。それをブラッツも知っているはず。
なのに、何故今、国家機密に近いこの部屋を見せてきたのだろう。
「ピリエに戻る前に、君を説得しなければならないからな。昨日の件は、部下に任せたんだが、失敗してしまったから。いろいろ考えたんだが正攻法で行くしかないと思ったんだ」
淡々と述べるブラッツに、アリーセの背筋が冷えた。
その口ぶりだと、昨日の誘拐事件にも関わっているように思える。まさか。
「何故、あなたが」
「君を取り戻すために決まっているだろう。君があの森の家を逃げ出した魔女だということは知っている。まったく。クンケル侯爵令嬢には参った。部下が暴走して君には悪いことをした」
今までブラッツがアリーセについて言及することはなかった。だが、王家の人間である以上、アリーセが森の家にいたことを知っていたも不思議ではない。
しかし、アリーセはそれどころではなかった。
(ここは……)
小さな夜会ができそうなくらいの広さの部屋。ただきらびやかな装飾は一切なく、ひたすらに無機質だ。石で出来た壁と床。そこには、三つほどの長方形の石――ロストが並んでいた。今まで見たどのロストよりも大きいそれらは、魔法回路がむき出しになっている。光を失っているのは、魔力がたまっていないからだろう。
「ロスト……」
(これが、ジギワルド様が言っていたロストだわ)
「ああ。その通り、ラウフェンで現役で稼働しているロストだ」
「豊穣のロストということですか?」
「そうだ。やはり気づいていたか。我が国の要でもある」
「どうしてそれを私に見せたんですか?」
アリーセはこれからピリエに戻るのだ。それをブラッツも知っているはず。
なのに、何故今、国家機密に近いこの部屋を見せてきたのだろう。
「ピリエに戻る前に、君を説得しなければならないからな。昨日の件は、部下に任せたんだが、失敗してしまったから。いろいろ考えたんだが正攻法で行くしかないと思ったんだ」
淡々と述べるブラッツに、アリーセの背筋が冷えた。
その口ぶりだと、昨日の誘拐事件にも関わっているように思える。まさか。
「何故、あなたが」
「君を取り戻すために決まっているだろう。君があの森の家を逃げ出した魔女だということは知っている。まったく。クンケル侯爵令嬢には参った。部下が暴走して君には悪いことをした」
今までブラッツがアリーセについて言及することはなかった。だが、王家の人間である以上、アリーセが森の家にいたことを知っていたも不思議ではない。