魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
「まあ、それも否定しない。だが、もう一つ。正当な理由がある。この辺りの土地では魔法が暴走しやすいんだ。魔法の効果が不安定といえばわかりやすいか?」
「……」

 アリーセは黙り込んだ。
 言われてみれば、なんとなく心当たりはある。
 アリーセの魔法の制御には癖があった。それが、魔法の効果が不安定な土地で魔法を使っていたからだとしたら?
 こちらに戻ってからは浄化魔法しか使っていないが、思った以上に効果が出た。

「そもそも、それなりに理由がなければ、こんなに魔女を忌み嫌うことが根付くわけがないだろう? 魔法は悪。それは実際暴走で痛い目を見た人間がたくさんいたからこそだ」
「……」
「五百年前のロストの暴走も、元はこの土地柄が原因だと言われている。さすがにあの規模の暴走はあれ以来起こっていないが」
「それと、私に何の関係が」

 魔法が不安定な土地なのはわかった。だからといって、アリーセをラウフェンに留め置く理由がわからない。

「『祈り』だ」

 ブラッツの言葉にアリーセは薄紫色の目を丸くした。
 もしかして、アリーセの魔力は動力源として使われていたわけではないのだろうか。その可能性に思い当たる。

「あの『祈り』で森の家のロストにたまった魔力は、ここに放出される。あまり知られていないようだが、聖属性の魔力には魔法を安定させる効果がある。あの魔女のおかげでわかった事実だ」

 あのロストには本当に増幅の効果しかなかったのだ。

「うそ」
「嘘じゃない。その証拠に、今までロストは暴走していなかった。そうだろう?」

 目の前のロストはかなりの大型だ。それもそうだろう。ラウフェン中に効果があるようなロストだ。

「昔からそうだ。聖属性の持つ子どもがあの森の家に預けられ、そして祈りを捧げて、魔法を安定させる」

 つまり、ベルタも聖属性の魔力を持っている聖女だったと言うことだろうか。

「私は、この国で魔法の地位を向上させたいと思っている。そのためには、アリーセ嬢の協力が必要だ。だから、国に残ってくれないか? 『聖女』アリーセ」

 魔力が不安定な土地。そこで魔法を使うためにはアリーセの聖属性の魔力で暴走を押さえる必要がある。

(私は……)

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