魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
(そう。私は、レナール様と離れたくない。許される限りずっとそばにいたい)

 何よりも正直な気持ちだった。
 このこの婚約は聖女であるアリーセを守るためのもの。それはわかっているけれど、でも、それでも彼と一緒にいる理由になるのであればそれでいい。

「そうか。まあ、予想通りの反応ではあるな」

 ブラッツの反応はあっさりしたものだった。
 わかってもらえたのだろうか。そんな風に楽観的に考えるつもりはなかった。

「できれば平和的な解決をしたかったのだが……仕方がない。この国の王太子として、国益を守ることが最優先事項だ」

 ブラッツはパチリと指を鳴らす。
 すると、ロストの陰に隠れていたらしい黒服の男たちが現れる。全部で七人ほど。アリーセの両脇にも二人ほど男が現れ、アリーセを拘束した。

「言っておくが、ここが一番魔法が暴走しやすい場所だ。魔法を使って抵抗することはやめた方がいい。自分に返ってくる恐れがある。下手すれば王宮全体が巻き込まれる可能性もあるな。君はその危険を冒せるか?」
「……」

 ブラッツの言葉に、アリーセは唱えていた魔法を途中でやめた。そんなことを言われて真っ正面から魔法が使えるわけもない。

「どうするつもりですか?」
「ひどいことはしない。君に森の家に戻ってもらうだけだ。ただ、監視付きの生活になるが」

 ブラッツは強制的にアリーセに森の家のロストを使わせるつもりらしい。

「君の婚約者には、私の方から別れを告げてあげるから安心しなさい」

 男たちの拘束が強まる。
 アリーセはブラッツをにらみつけた。

< 132 / 147 >

この作品をシェア

pagetop