魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
* * *

三ヶ月後。

(緊張する……)

 王宮の控え室。
 鏡台の前に座りながら、アリーセはきらびやかなドレスの裾をぎゅっと握った。
 今日はピリエ王宮の夜会。そして、アリーセがレナールの婚約者として初めて社交の場に出る日でもある。

 この三ヶ月、アリーセは魔法の勉強の傍ら、公爵夫人としての教育も受けてきた。覚えることは山のようにあるけれど、でもレナールの隣に並ぶためだと思えば辛くはない。それに、レナールは頑張るアリーセを驚くほど甘やかしてくれるのだ。
 甘いものを手ずから食べさせてくれたり、惜しみなくほめてくれたり、ぎゅっと抱きしめてくれたり。そのたびに公爵邸の皆が温かい視線を向けてくれるのでとても恥ずかしい。
 この婚約を正式なものにするにあたり、少し悩んだのがアリーセの身分をどうするかだ。
 ジギワルドの口ぶりからも、アリーセの身元はその気になれば簡単にわかるのだろうと思う。でも、どんな事情があるにしろ、アリーセが家族と別れて暮らしていたのは確かなのだ。アリーセの家族はベルタだけでいいと思っている。
 結局、アリーセはユーグが選んだ信頼できる家の養女となることになった。

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