魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
 レナールがアリーセに向かって小さく会釈する。
 ユーグは大体の事情を簡単に説明してくれる。
 ギャロワは人身売買の罪で捕まったこと。法の下裁かれること。
 被害者であるアリーセの身の上はきちんと保証されること。
 一通りの説明が終わると、ユーグはアリーセに質問を始める。

 昨日の事情聴取とかぶっている部分もあったが、アリーセは問われるがままに自分のことを話した。
 名前はアリーセ・フィネル。年齢は十七歳。住んでいるのはラウフェンの南にあるペルケ村。一人暮らしで他に身よりはいない。仕事は? と問われたときだけは曖昧に濁した。魔女が仕事に就ける訳がない。幸い、ユーグがそれ以上追及することはなくほっとする。「それで、君は何故ギャロワの元へ?」
「どうやら身分が高い方の不興を買ってしまったみたいです」

 レナールは黙ってユーグとアリーセのやりとりを記録に残している。

「ありがとう。じゃあ、最後に。これが一番大切なのだけれど、君はこれからどうしたい? 家に帰りたいというのならラウフェンまでの帰路を責任を持って手配する、ピリエに残るというのもありだ。正直に教えてほしい」

 ピリエに残るという選択肢を示されるとは思わなかった。
 でも。アリーセの答えは最初から決まっている。

「できれば、帰りたい、です」

 戻って祈らなければならないから。
 アリーセは正直な気持ちを述べたつもりだった。なのに。
 今までずっと黙っていたレナールが急に口を開く。

「それは、あなたの本心ですか?」
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